【モダン焼き】大阪はチェーン店の満足度も高かった。「鶴橋風月」のモダン焼き超デラックスバージョンで大満腹!:パリッコ『今週のハマりメシ』第156回
ある日、あるとき、ある場所で食べた食事が、その日の気分や体調にあまりにもぴたりとハマることが、ごくまれにある。 【写真】オムそばも魅力的 それは、飲み食いが好きな僕にとって大げさでなく無上の喜びだし、ベストな選択ができたことに対し、「自分って天才?」と、心密かに脳内でガッツポーズをとってしまう瞬間でもある。 そんな"ハマりメシ"を求め、今日もメシを食い、酒を飲むのです。 * * * 前回に続き、家族で大阪旅行中。 僕は個人経営のなるべく渋い味わいのあるような酒場が大好物だけど、残念ながら今回の宿の周囲にそういう店はなさそうだ。そもそも、あったとして妻子を無理やりそういうところに連れていっても、自己満足に終わってしまいかねない。 小1の娘の最大の目的であった「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」で、日中遊びまくった夜。腹は減っているが、ちょっと足を伸ばして地元っぽい店に、みたいなことをする元気はない。そこで、宿から近いショッピングモールへ行ってみることにした。 そこには「サイゼリヤ」「マクドナルド」「スシロー」など、常日頃からお世話になりまくっている店たちが並んでいる。せっかく東京から大阪までやってきて、それもどうか......と、さらに歩いてみると、「鶴橋風月」というお好み焼き屋を発見。 娘はたこ焼きをはじめとする"粉もん"が大好物で、家でも頻繁に作っている。鶴橋といえば大阪を代表する飲み屋街のひとつ。見た目はチェーン店的だけど、その地名が冠されてるということは大阪ならではの店だろう。あまり迷っている余裕は時間的にも体力的にもないし、入ってみることにした。 さっそく席に通してもらい、「生ビール(中)」(税込590円)を注文すると、店長と思われる男性が、「今日、ちょっと人が足りてへんのですが、精一杯がんばらせてもらいますんで!」と、満面の笑みで。僕の住む東京の、しかもチェーン店で、こんなに何気なくも感情のこもった接客をしてくれる店はあるだろうか? と考えると、やはり大阪って、ちょっと特別な土地なんだなという実感が強まった。 お好み焼きに鉄板焼きに焼きそばにと、メニューはたくさんあるが、娘は迷いなくビシッと「オムそば」(1,280円)を指さす。はい、1品決まり。 残りは夫婦でじっくり検討。メニュー写真を見るかぎり具だくさんにもほどがある「風月デラックス焼きそば」にめちゃくちゃ惹かれるが、お好み焼きも食べてみたいし、オムそばと若干かぶる。すると、この店のお好み焼きには「モダン焼き」というバリエーションがあり、それがそば入りらしい。「風月デラックス」のモダン焼きバージョンが、2,480円。ちょっとぜいたくな気がするが、せっかくの大阪の夜だ。頼んでみることにしよう。 すぐに店員さんが、具だくさんのお好み焼きのタネを持ってきて、テーブルの鉄板で焼きはじめてくれる。その所作があんまりにも雑っぽく感じ、これ、本当に美味しいお好み焼きになるのかな? と見ていると、少し席を離れては麺をのせてフタをし、少し席を離れてはかつお節をのせてフタをし、そのたび、単なる具材だったものが、うまそうなお好み焼きらしきものへと成長してゆく。この店員さん、プロだな......(当たり前)。 そんな様子を感動しながら見ていると、厨房で調理され完成したオムそばも鉄板に到着。あえて黄身と白身を混ぜすぎていない、なんとも色気のある仕上がりだ。たまらず少し分けてもらうと、とろとろの玉子と太麺のハーモニーが素晴らしすぎる。
【関連記事】
- 【カレーライス】あこがれの大阪名物、自由軒の「名物カレー」を人生初体験!:パリッコ『今週のハマりメシ』第155回
- 【魯肉飯&大腸麺線】要町の小さな名店「有夏茶房」の本格台湾料理は、現代生活におけるポーションだ:パリッコ『今週のハマりメシ』第154回
- 【サッポロ一番"昆布水冷やし"塩らーめん】2024年の夏をともに過ごした「昆布水」の記憶を、この一杯にとどめておきたくて......:パリッコ『今週のハマりメシ』第153回
- 【モツあんかけラーメン】大塚のニューウェーブ町中華の名物ラーメンが、ぐぅのねも出ないほどにうまかった話:パリッコ『今週のハマりメシ』第152回
- 【チキンカツ玉子とじ】思いがけず本気の食事になってしまった、老舗酒場の絶品チキンカツ玉子とじ:パリッコ『今週のハマりメシ』第151回