“休日出勤”でこの速さ! 準備不足ながら優勝のWRC王者ロバンペラにトヨタも驚き「最初は不機嫌だったが、ひとたび自信をつけたらこれだ」
WRC(世界ラリー選手権)第7戦ラリー・ポーランドを制したのは、トヨタのカッレ・ロバンペラだった。元々出走予定のなかったラリーに急遽参戦して優勝してみせたWRC王者のパフォーマンスは、トヨタにとっても予想以上だったという。 ロバンペラにラリー出場の打診があったのは、開催週の火曜日。湖でジェットスキーを楽しむために整備をしていた最中であった。今季ロバンペラとシートをシェアしているセバスチャン・オジェがレッキ(コース下見中)に一般車と衝突し、出走を見合わせることになったのだ。 無論、ロバンペラにとっては事前テストも行なっていなければ、車載映像によるコース下見なども行なっていなかった。そのため本人も準備不足から「今回はかなり厳しい挑戦になる」と漏らしていた。大急ぎでポーランドに飛んだロバンペラは寝る間も惜しんでレッキとペースノート作成に追われ、レッキが済んだのはラリー開始数時間前だったという。 急ピッチの準備で疲労困憊だったロバンペラだが、ラリー本番では非常に高いパフォーマンスを見せ、なんと総合優勝を飾ってみせた。トヨタのチーム代表であるヤリ-マティ・ラトバラは大会中、ロバンペラの戦いぶりを次のように称賛した。 「ワールドチャンピオンというのは他とは違う何かを持っていて、それによって自身の力を限界以上に引き出すことができる」 「それは(セバスチャン)ローブやオジェにも見られたもので、今のカッレもそうだということ。彼が事前準備なしでここまで強さを見せるとは考えもしなかった」 「最初の方は彼もやや不機嫌な様子だったが、ワールドチャンピオンがそれらを全て受け入れ、アタックできる自信を身に付けた時には、こういうことになるということだ」 「非常に力強いパフォーマンスだった。(昨年の)雨のエストニアで見せたような難しいコンディションでの走りは彼の持ち味でもあるのだが、今回こそワールドチャンピオンの真骨頂と言えるだろう」 かつては自身もトヨタのドライバーとしてWRCを戦ったラトバラ代表は、ラリーに向けた準備にどれだけの労力がかかるかを誰よりも理解している。そのため、映像での予習なしでラリーに対処してみせたロバンペラには畏敬の念を覚えたという。 「彼がステージ(の地図)をうまく頭の中で思い描けず、イライラしていたのを見ただろう」 「ノートはあるとはいえ、最近では映像で見たステージを頭に思い浮かべて、それをいかに活用できるか、そしていかに道幅ギリギリまで攻められるかで差がつくんだ」 「その(映像での)イメージがなければ、完全にノート頼みになってしまうし、道の端はどうなっているか分からないから、そこを使うにはリスクが伴う。つまりノートに100%頼りながら、時にはノートに書かれている以上のことをしないといけないんだ」 「ここのラリーでは、少し果敢に攻めて、ノート(での指示)を超えたドライビングが必要になる。道路の状況が頭に入っていなければ、かなりリスキーで危険だ」
Tom Howard