芸能界はなぜセクハラやパワハラが横行するのか 変化を起こそうと活動する3人が語る「圧倒的な立場の差」 「ジャニーズ性加害問題」(3)
× × × あさだ・ちほ 東京都出身。米国の大学を卒業後、通訳として活動。2020年にインティマシーコーディネーターの養成プログラムを修了し、日本で映画やドラマの製作に参加。 ▽「性加害、原因は社会構造や環境に」 映画監督の舩橋淳さん 映画「ある職場」で、舩橋さんは実際に起きたセクハラ事件をフィクションとして再構成した。見えてきたのは被害を訴えにくくし、加害をあいまいにしがちな日本社会の構造だ。 × × × 「ある職場」で描いたのはセクハラ事件の後日談。日本には被害を訴えた人を保護する対策がない。被害を繰り返し訴えたり、それに対する誹謗中傷を受けたりするうちに被害者は疲れ切ってしまう。一方米国の企業文化では、セクハラの告発者は内部告発者と同じ扱い。まずは被害者を保護し、第三者機関による調査が始まる。被害が裏付けられれば加害者に処分が下され、事実が公表される。それがシステムとして確立されています。
最近次々に表面化した日本映画界の性加害問題も、個人の資質というより環境や構造に大きな原因があると思います。僕はニューヨークで映画製作を学んだので、2007年に監督として日本に帰国した時は、撮影現場の「NO」と言いにくい雰囲気に戸惑いました。特有のタテ社会で権力を握っている監督やプロデューサーに逆らえない。みんなが我慢したせいで、その環境が温存されてきてしまった。 ハラスメント対策のほか労働環境やジェンダー平等など改革すべき点は多いです。現場レベルで大切なのは「線引き」。最近、米国ではオフィスラブ禁止の企業が増えているとか。映画界も撮影現場は恋愛禁止にするしかないのではないでしょうか。性暴力は被害だと認識するまで時間がかかることもあるからです。 ラブシーンをなるべくリアルに撮りたいと言う監督もいるかもしれませんが、果たしてプロフェッショナルと言えるのか疑問です。プライベートで親しくならなくても、良い演技はできる。日本映画界のセクハラ対策はまだ黎明期です。