芸能界はなぜセクハラやパワハラが横行するのか 変化を起こそうと活動する3人が語る「圧倒的な立場の差」 「ジャニーズ性加害問題」(3)
× × × ふなはし・あつし 1974年大阪府生まれ。代表作に東京電力福島第1原発事故を追ったドキュメンタリー映画「フタバから遠く離れて」。 ▽「被害の背景にある、労働契約を結ばない慣習」 俳優で日本芸能従事者協会代表理事の森崎めぐみさん 森崎さんは芸能界の労働災害やハラスメントなどの実態を調べ、環境の改善を訴えてきた。「芸能界では、ハラスメントを含めた一般的なコンプライアンスが守られているとは言い難い」と芸能界の風潮を指摘する。 × × × 芸能界は長年「無法地帯」でした。俳優やスタッフら芸能従事者の多くはフリーランスで、セクハラやパワハラ、労災に当たるようなことが起きても何の法律にも守られてきませんでした。 告発があったジャニーズ事務所を巡る性被害が本当であれば、ジェンダーを巡る社会構造や、ハラスメントのない快適で安全な職場にするための適切な安全衛生対策が欠けているとの問題もはらんでいると思います。実態を明らかにし、根本的な解決につなげてほしいです。
性被害だけでなく、ハラスメントを訴えることは難しいです。また現場でけがをしたり、命を落としたりすることがあっても補償されるとは限りませんでした。背景の一つに労働契約を結ばず仕事を依頼する慣習があります。交通費などの経費がうやむやにされ、新型コロナウイルス禍で仕事がキャンセルされても補償の請求すらできませんでした。 おかしいと思い声を上げ、少しずつ変化も見えてきました。2021年4月から労災保険の特別加入制度の対象が広がり、補償が受けられるようになりました。俳優を含むフリーランスのための新たな法律も今国会で決まりました。書面での業務や報酬の明確化のほか、ハラスメントの問題にも触れ、委託事業者に適切な体制整備を求めています。こうした取り組みは環境改善へのスタートラインです。俳優もスタッフも自分の権利を勉強する機会がなく、ガイドラインを通じて権利を自覚し主張するきっかけになってほしいです。