芸能界はなぜセクハラやパワハラが横行するのか 変化を起こそうと活動する3人が語る「圧倒的な立場の差」 「ジャニーズ性加害問題」(3)
芸能界では、ジャニーズ事務所のジャニー喜多川前社長の問題以外でも、深刻な性加害や過酷な労働実態が次々と明らかになっている。チャンスが欲しいタレントや俳優、アイドルらは、権力を持つ加害者に比べて圧倒的に立場が弱い。このため、たとえ被害に遭っても、声を上げることは簡単ではない。「無法地帯」のようだった芸能界を変えようと取り組み始めた3人に現状を尋ねると、背景にある慣習や構造が浮かび上がってきた。(共同通信=安藤涼子、前山千尋) ※ジャニーズ性加害問題については、記者が音声でも解説しています。以下のリンクから共同通信Podcast「きくリポ」をお聞きください。https://omny.fm/shows/news-2/24-jr ▽「撮影現場のケミストリー」が招く危険性 インティマシーコーディネーターの浅田智穂さん 映画やドラマの現場で、性的描写があるシーンの撮影をサポートするインティマシーコーディネーターの浅田さん。セクハラや性被害がないよう、製作側と俳優を橋渡しする新たな役割として注目を集めている。
× × × ヌードや激しいキスなどのシーンを安心して安全に撮影できるよう調整する仕事です。アクションコーディネーターに近いと言えば分かりやすいでしょう。お芝居とはいえ、そうしたシーンをいきなり演じると俳優たちの心や体が傷つく可能性もある。 台本だけでは俳優が服を着ているか、脱いでいるか分からないこともあり、まずは監督にヒアリングします。その上で出演者と面談し、肌はどこまで露出するか、性描写はどこまで見せられるかなどを確認します。日本にまだ数人しかいない新しいポジションなので、最初は理解してもらうのが難しかった。現場の負担が増えてしまうことは否めず、邪魔者扱いもされました。最近ようやく、撮影現場でスタッフに「ご一緒できて助かりました」と言われることが増えてきました。 どんなシーンも全てはお芝居。役になりきって自然に見せることが役者の仕事であり、プライベートな部分まで全てさらけ出す必要はありません。事前に動きやせりふを決めず、現場でケミストリー(化学反応)を起こしたいという考え方はある程度理解できますが、アクションに置き換えればそれが俳優を危険にさらすことは分かるはず。安心して演技に集中できる環境をつくれば良い化学反応は起きるし、私たちが俳優の立場になって考えることで、撮影に立ち会うスタッフにも安心してもらえる。インティマシーコーディネーターをつけるかどうかは今は製作側に委ねられていますが、明確にルール化すべきだと考えています。