「ウクライナ侵略を考える~『大国』の視線を超えて」著者、加藤直樹氏に聞く(1)「反侵略」の立場から(全4回シリーズ)
驚いたのは、和田春樹さんの文章でした。彼は『ウクライナ戦争即時停戦論』(平凡社新書)のなかで「ロシアとウクライナは350年間一つの国だった」と書いています。「だからこのたびの戦争は…ロシアの内戦だとみることもできる」とまで。 ロシア「と」ウクライナが一つの国だったという表現は、植民地主義の問題を理解していれば出てこないはずの危ういものだと思います。他の民族関係に置き換えて考えてみれば、その恐ろしさが分かります。それに、ロシア=ウクライナ帝国とか、「ロシライナ国」という国があったのではないのです。 すべてのネーション(国民)は、歴史的に形成されるものです。ウクライナの場合、19世紀以降、ウクライナ民族運動が勃興し、1917年にはウクライナ人民共和国が短い間成立し、以後、ソ連内での共和国を経て、1991年にウクライナの独立が実現し、ロシアを含む国際社会がそれを認めました。それからすでに30年間、ウクライナという独立国家が、ロシアとは別の国として存在してきました。にもかかわらず和田さんは、「わずか30年前」の独立だから「ロシアの内戦だとみることもできる」と言い切ってしまう。これはさらに危うい。
私は日本と朝鮮の関係について考え、行動してきた和田春樹さんに敬意を抱いてきましたから、なぜこうした発言が平気でできるのか、理解できません。 インタビュー第2回につづく (全4回) ****************************************** ■6月29日に東京で『ウクライナ侵略を考える 「大国」の視線を超えて』(あけび書房)の著者、加藤直樹氏の出版記念講演会が開催される 「ウクライナ侵略を考える 「大国」の視線を超えて」 日 時 6月29日(土)14:00~16:00(開場13:30) 会 場 専修大学神田キャンパス10号館5階10051教室 地下鉄神保町駅A2出口3分/地下鉄九段下駅5出口1分/JR水道橋駅西口7分 オンライン(ZOOM)は事前申し込み(Peatix) https://ukrainewar.peatix.com 講 師 加藤直樹さん 資料代 1000円 共 催 あけび書房 お問い合わせ先 civilesocietyforum@gmail.com ******************************************
【加藤直樹(かとう なおき)】 1967年東京都生まれ。出版社勤務を経てフリーランスに。著書に『TRICK「朝鮮人虐殺」をなかったことにしたい人たち』(ころから)、 『九月、東京の路上で 1923年関東大震災ジェノサイドの残響』(ころから)『謀叛の児 宮崎滔天の「世界革命」』(河出書房新社)など。