<プロ野球>ストッパーの起用法の“タブー”を犯してはいけない?
イニング跨ぎ登板に肯定的な与田氏は、さらに続ける。「特に巨人、阪神、広島、中日が接戦となっている今のセ・リーグの状況を考えれば、リードして勝てるゲームは、確実にものにしていかねばならないだけに、イニング跨ぎの起用も仕方がないかもしれません。9月のような戦いを仕掛けなければならない時期だと思います。ここで置いていかれれば優勝圏内から引き離されます。阪神の内部事情はわかりませんが、外からは、オ・スンファンの前を安心して任せることのできるピッチャーがいない状況に見えます。それを考慮すれば、なおさら、信頼のおけるオ・スンファンのイニング跨ぎ起用はありでしょう。本人も韓国時代から経験しているという話ですしね。ただ、登板後の肉体的なフォローは必要です。球数によっては連投などにも気をつけなければならないでしょう」。 だが、その一方で、非の声もある。阪神DCで評論家の掛布雅之氏は、オ・スンファンのイニング跨ぎ起用は、まだ時期早尚という意見を持っている。「一般論として非常事態でのストッパーのイニング跨ぎ登板ということに反対するわけではありません。ただ、現段階でのオ・スンファンのイニング跨ぎの起用は、まだ時期的に早いでしょう。あの試合に関して言えば、藤浪の出来と中6日という間隔を考えれば、あと1イニング引っ張ってもよかったと思います。中継ぎ投手の調子と、相手打線との相性を見極めながら、時には、オールスター継投で、オ・スンファンにつなぐことも考える必要があると思います。オ・スンファンのイニング跨ぎを使い、ムチを入れるのは、まだ先。9月に入ってからでいいと考えています」。 長嶋茂雄氏の監督時代の勝利の方程式や、星野仙一氏の中日監督時代のストッパーの酷使は、時には問題とされた。投手の肩は消耗品で、選手寿命か、目の前の勝利かの選択は難しい。だが、トレーナーなどのフォロースタッフや、医療知識が充実している現在においては、本人が納得の上で、状態を見ながらならば、“適度”なイニング跨ぎ登板は、酷使の批判を受けるものではないだろう。だが、その疲労で、本当の勝負どころに影響が出れば元も子こない。長いペナントレースを考えたとき、いつ、どこで、その禁じ手を使うかは、綿密なベンチワークにかかっている。