アグレマン受けても赴任できない駐中韓国大使…弾劾で韓国外交にも空白
尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の弾劾訴追案可決による外交空白が現場で現実化するだろうという指摘が出ている。外交最前線で尖兵の役割を担う在外公館長の赴任に相次いで影響が出るとの懸念が大きくなってだ。 外交界によると、10月に駐中大使に内定した金大棋(キム・デギ)元大統領秘書室長は中国政府のアグレマン(同意)をすでに受けているが、赴任できない可能性が大きくなる雰囲気だ。特命全権大使は本国国家元首からの信任状を受け、これを駐在国首脳に提出することで外交活動ができるようになるが、この手順そのものにブレーキがかかることになったためだ。 法律上では韓悳洙(ハン・ドクス)大統領代行が大統領の外交権限すべてを引き継ぐが、職業外交官でない特任公館長に信任状を授けるには政治的負担が伴うと指摘される。弾劾審判手続きが進行中の尹大統領が抜てきした大使指名者に信任状を授けること自体を政界などが事実上の人事権乱用と解釈しかねないからだ。 こうした状況で金元室長の駐中大使指名は事実上白紙化されたとの見方が外交界で強まっている。韓国外交部高位当局者は15日に記者らと会い、金元室長の赴任と関連し「もう少し状況を見守って検討してみなければならない。いま確実に話すのは時期的に適切でない」と説明した。 金元室長が赴任できないならばそれ自体が早くからアグレマンを出した中国に対する外交的欠礼に当たる。しかし内乱容疑を受けている尹大統領の最側近を中国に派遣することがさらに大きな欠礼になるとの見方もある。その上尹大統領が12日の国民向け談話で中国人が関係するスパイ事件を取り上げ、中国外交部報道官が同日「深い驚きと不満を感じる」と反発するなど尹大統領に対する中国の感情も悪化した状況だ。 また、憲法裁判所で尹大統領弾劾案が認容され次期政権が発足する場合、駐中大使を含む周辺4大国(米日中)大使は新たに選出された大統領が任命するのが当然の手順という分析もある。金元室長の赴任が次期大統領に対する事実上の人事権侵害ないしは実益のない人事という誤解を生じさせかねないという指摘が出る理由だ。相手国である中国の立場でも任期が数カ月にすぎない「期限付き大使」を受け入れることになる。 こうした中、戴兵新駐韓中国大使の赴任は年内に支障なく進めるというのが韓国政府の構想だ。戴大使が赴任する場合、韓大統領代行に信任状を提出して公式活動を始めることになる。しかし駐中韓国大使が空席である点を考慮して中国が駐韓中国大使の赴任を遅らせるかもしれないという観測もある。 ただ弾劾局面でもすでに空席や特任公館長でない職業外交官で内定した公館長赴任は計画通り進めなければならないと指摘される。外交部によるとイタリア、セルビア、オランダ、ブルガリアなどが現在大使不在の状態だ。前任大使がすでに帰任した状態で次期指名者に対する駐在国のアグレマンなど関連手続きが進行していた中で韓国が大統領代行体制に転換することになったのだ。代行体制で新任大使赴任が遅れる場合、次期政権で公館長人事をする時まで考慮すれば各公館で長くて1年にわたり大使の空席状態が続くことになるとの懸念も出ている。