社長と社員の「給与格差」、どれくらいなら許せますか?…日本では、企業の経営トップと従業員の報酬格差は「最大174倍」もあった!
社長と社員の給与格差、どれくらいならOKですか? 日本では、資産5億円以上の超富裕層は9万世帯。単身世帯の34・5%は資産ゼローー。 【写真】格差は避けるべき課題なのか?貧困、格差、大金持ちにまつわる資本主義の宿命 第一人者が明かす、貧困大国・日本への処方箋。 ※本記事は橘木俊詔『資本主義の宿命 経済学は格差とどう向き合ってきたか』から抜粋・編集したものです。
所得格差を考える三つの視点
戦後の日本は「一億総中流社会」という言葉に象徴されるように、平等社会と信じられてきた。高度成長期とその後の安定成長期のように、経済は好調ながら国民は平等生活のなかにいると信じられ、それを世界に誇ってきた。 しかし例えば拙著『日本の経済格差』(1998年)、『格差社会』(2006年)で示したように、日本の平等社会に疑問符が付けられるようになった。代表的には、国民の間の所得格差が拡大している事実が示された。 『資本主義の宿命』「まえがき」でも少し触れたように、「所得格差」を実証するに際しては、次の三つの視点がある。第一は、格差という言葉が表現するように、高所得者と低所得者の所得が実際にどれほどあるかに注目して、その差が大きいか小さいかを問題にする視点である。例えば、(A)高所得者の平均所得が1億円で、低所得者の平均所得が200万円の場合と、(B)前者が4000万円で後者が400万円の場合を比較して、どちらが格差社会としてより深刻かを論じることができる。 もとより、どちらがより深刻かは、人びとの価値判断に依存するが、一方でどちらの場合が経済成長をより高めるか(あるいはより高い経済効率性が得られるか)、という論点をも提供する。本書は、このことについてきちんと議論したい。 第二は、貧困者が社会にどれだけ存在するか、という視点である。もとより貧困者の定義をせねばならないが、上の例では(A)のケースの200万円の方が、(B)の400万円よりも貧困であると判断できる。しかしもっと科学的な見地から貧困とみなせる所得はいくらであるかを探求する必要があるので、本書ではそれを行う。 第三は、貧困者とは対極にある高所得・高資産保有者の存在である。上の例であれば、(A)の1億円というのは高所得者とみなせるが、日本では年所得がおよそ200億円という超高額所得者もいるので、高所得者の間の所得差が相当に大きいと理解しておこう。これだけの所得差があれば、所得税額もかなり異なってよい(これを累進所得税制と称する)、と思う人が多いだろう。本書ではこの累進所得税について考察する。