「自分が思う“本当の自分”は、ただの妄想です」…生物学者が説く「厄介おじさん」にならない生き方
“周囲から認められていない”という劣等感
近年、カスタマーハラスメントが社会問題化している。報道されるケースを見ると、ハラスメントをする人の多くが“おじさん”だ。 【本文公開】「常識で考えろ!」…長谷川岳参院議員から”カスハラ”を受けたタクシー運転手の衝撃告白 生物学者の池田清彦先生は、自著『バカの災厄』のなかで、カスハラやあおり運転などの迷惑行為に走る人を「自分は絶対的に正しいという思いに取り憑かれたバカ」だと指摘。こうした「バカ」が日本には大量発生しており、その要因として、日本の教育システムに問題があるのだと考察する。 日本の教育やネット社会が「バカ」を生んでいるとしたら、なぜ、おじさん世代に「バカ」の災厄は目立つのか。理由は、この世代ならではの「認められるはずの自分が認められていないことによる劣等感」にあるという。 「『本当の自分はこんなもんじゃない』『もっと周囲から認められるべき』はずなのに、現実は違い、評価を得られていない。おじさん世代にはそう不満を抱えている人が一定数いて、『認められるべきはずの偉い自分』を見せつけるために自分の正義を振りかざしているのだと思います。 若いうちは、『自分は偉い』とまでは思っていないから、自分を大きく見せたいとも思わないはずですが、40歳を過ぎて、同期や後輩に追い抜かれることが増えていけば、『こんなはずじゃない』といった苛立ちや焦りは大きくなります。かといってクビになったら困るから会社に文句も言えない。だから仕方なく、店員や女性など自分より弱い立場の人に『偉い自分』を見せつけることで鬱憤を晴らしているのだと思いますね」 (池田清彦先生、以下同) ◆世間から得ている評価が、“本当の自分”だと思ったほうがいい 若い世代が厄介なおじさんにならないためには「若いうちから自分を客観視することが大切」だと説く。だが、それができない人が多いとも。 例えば、周囲からの評価が得られないときに、「本当の自分はこんなもんじゃない」と腹を立てた経験はないだろうか。これが大きな間違いだと池田先生は言う。 「自分が思う“本当の自分”は、ただの妄想です。世間から得ている評価が、“本当の自分”だと思ったほうがいい。思うほど給料がもらえなければ、自分はそれだけの実力しかないということ。転職だって簡単にできる人はそれなりに実力があり、決まらない人は実力がないわけで、それが本当の自分なんです」 「本当の自分はこんなもんじゃない」と文句を言いたくなったときは、嫌でも現実を直視し、“本当の自分”を認めるべきだ、と。そして何より大事なことは「自分の能力を発揮できる場所を見つけること」だと強調する。