“昭和の紙芝居”がイタリアで進化 日本の街頭から姿消すも海外で人気に 元アナ・杉上佐智枝が取材
■「学校の中に“人の声”を」…マウロさんが語った“夢”
マウロさんには、今後に向けて3つの夢があるそうで、「まずは、学校の教壇に紙芝居を置くこと。今、教育現場には新しい電子機器ばかりが増えていき、人同士のやりとりが減っている。学校の中に“人の声”を、皆で気持ちを共有しあえる紙芝居を入れていきたい」と、明かしてくれました。 そして、「次にエコロジーの観点から、街の中に自転車で紙芝居を持っていきたい。そして3つ目は、障害のある方々、特に耳の不自由な方に向けての活動で、紙芝居を使っていきたい」と、今後の夢を語ってくれました。 紙芝居は、環境や教育、多様性などの社会課題にアプローチできる「サステナビリティ」を最も体現できるメディアではないでしょうか。そして、それはもちろん日本の状況にもあてはまります。 そして最後に、イタリアと日本でこれから一緒にやっていきたいことを聞いてみました。 マウロさん「12月7日の『世界KAMISHIBAIの日』。この日に、“平和”というものに対して、何かやりたいと思っています。“平和”というのは、会話と物語を通して形作られていくものだと思っているからです」
■編集後記
『紙芝居文化の会』の呼びかけで、2018年に制定された「世界KAMISHIBAIの日」。日本独自の文化財である紙芝居の共感の力で、平和を希求する日です。紙芝居文化の土台を作った、まついのりこ先生いわく、絵本の「個の感性」と紙芝居の「共感の感性」、それが人間らしく生きるための両輪である、と。SNSの普及で「発信」の時代になり、特に子どもたちに共感の力、生きる喜びを感じてもらえる紙芝居の役割は、これからますます増えていくと感じています。約9900キロ離れたイタリアでも、根っこの思いはまったく同じ、そのうえでイタリアらしい遊びと華やかさ、社会課題の解決にも志を向けていることに感銘を受けました。テレビの普及と紙芝居の衰退の関係があるからこそ、令和のテレビ人として、今、紙芝居でできることを追求していきたいと思います。 (取材・構成 杉上佐智枝)