“昭和の紙芝居”がイタリアで進化 日本の街頭から姿消すも海外で人気に 元アナ・杉上佐智枝が取材
■イタリアで設立された『紙芝居文化協会』
20年ほど前に、このブックフェアで日本の紙芝居に出会い、普及活動を始めたという『イタリア紙芝居文化協会』のマウロさんに話を聞きました。 杉上「なぜ、紙芝居を始めたのですか?」 マウロさん「日本の出版社が、長く続く古い語り方を教えてくれました。 “この方法はすごい!”と僕たちはとても感動したので、やってみたいと思いました」 杉上「紙芝居の魅力は何だと思いますか?」 マウロさん「拍子木の音、大きな声でストーリーを話す、ということ。スピーカーなどを通していない“肉声”であるということ。本を読むというのは個人的なこと。せいぜいもう1人がいるくらい。でも、紙芝居というのはみんなで(物語を)共有するということなんですね。他の人と一緒に読む、それはとても重要な紙芝居の特徴だと思います」 マウロさんは、かつて日本の街中で行われていた大勢で一緒に物語を見て楽しむ独自の紙芝居文化に、魅力を感じたといいます。
■日本の紙芝居がイタリアで独自に進化
日本の伝統的な紙芝居の枠部分は『舞台』と呼ばれ、これがゆっくり開くことによって観衆が引き込まれる…。まさに、劇場の幕が開くのと同じ大事な役目があり、あるフランス人の男の子は、この舞台を“魔法の箱”と呼んでいたとか。 日本では、茶色のシンプルな舞台が一般的ですが、ブースに飾られていた気持ちが明るくなるようなヒマワリ色の舞台は、カラフルなイタリアのイラストにもよく合っていました。そして、そこには遊び心あふれる仕掛けが。『イタリア紙芝居文化協会』会長のパオラさんが、紙芝居を実演してくれました。
拍子木を「カンカン」と鳴らして始まるスタイルは、日本の伝統へのリスペクトが感じられます。見せてくれたイタリアの紙芝居には、丸い穴が空いていて、そこから指を出して動物のシッポなどを表現したり、紙を半分引き抜くと違う絵柄になるなど、独自の工夫がありました。 マウロさん「紙芝居の強みは、言葉があって、イメージがあって、“劇場”があるということ。この3つはものすごく力を持っている。どんどんテクノロジーばかりに寄っている今、こういうものはとても大事だと思っています」