サガン鳥栖・川井健太の指導者論「選手をうまくさせたい」「新しいことは好き、流行りは嫌い」
「そうですね、アルテタが同い年ですが、J1ではまた一番下になっちゃった。今から出てくるでしょうけどね。36歳からJリーグの監督を始めて、年下の監督と対戦するのは楽しみです。それまで続けているか、わからないですけど(笑)」 ――自分のパーソナリティを分析してください、と言われたら? 「『無口で、喋りたいかというと、喋りたくない。人前に出たいかと言われると、出たくない』ですね。近頃はイベントが続いたのですが、人前で話すと声が小さくなって(笑)。ミーティングでは伝えたいことがあるから、パンパンパンと言葉が出てくるんですが。だから、好きなことしかやっていない、という人間ですね。チームの挨拶はスーツですが、『ジャージで行っていい?』って試しに聞いたら、『参拝があるので』と諭されました(笑)」 ――オリジナルで監督像を作ってきた印象です。 「過去を振り返ると、環境に恵まれていたんでしょうね。自分でやらないといけない、考えないといけない環境でした。それも、答え合わせができず、答えがないなかでやり続けないといけなかった。ライセンスを取りに行って、『案外と合っているんだな、じゃあ、この考えでいいんだ』となりました」 ――答えなしでも探し求められたのは、サッカーが好きという熱量が巨大だったから? 「好きだからこそ、探究心があったんでしょうね。監督を始めたころ、負けた後の選手の悔しそうな表情を見て、『うまくさせたい』とシンプルに思いました。『自分が何かやりたい、知りたい』は後に来たもので、試合結果どうこうではなくて、プレーがうまくいかない選手が、どうやったらうまくいって、変えられるのか。そこは今でも大事にしています」 ――仮説を立てて、実証するという実験が続きますね。 「新しいことは好きですが、流行りは嫌いなんです。マイノリティ(の志向)なんですかね。新しいものってゼロじゃないですか? 人より先に何か見つけていきたい。これは性(さが)かもしれません。みんなが知らない曲をひとりだけ知っていて、売れたら興味がなくなる、みたいな(笑)」 Profile川井健太(かわい・けんた)1981年6月7日、愛媛県生まれ。現役時代は愛媛FCでプレー。指導者としては環太平洋短期大学部サッカー部監督を皮切りに、愛媛FCレディースヘッドコーチ、日本サッカー協会ナショナルトレセンコーチ、愛媛FCレディース監督、愛媛FC U‐18監督、愛媛FC監督、モンテディオ山形コーチを経て、2022シーズンからサガン鳥栖監督に就任した。
小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki