里山の木々の伐採は自然破壊か? 危機を救いたい神戸市の取り組み
緑と都市の共存する未来に向けて
かつては燃料用だった広葉樹林は、いまは通常は価値がないと判断されている。ところが、広葉樹材は全般に硬めで家具や床材に向いている。しかも色や木目が個性的だ。 黒田は、高級家具の製造販売で知られる「カリモク家具」に、神戸市北区や長野県大町市の里山、埼玉県川越市の平地林の木の良さを説明して、買い取りにまで至った。 「一流メーカーが買い取ると、森林所有者の目の色が変わります。ただ、品質にばらつきのある広葉樹は加工が難しく、天然乾燥には手間がかかり、人工乾燥には大型の装置がいるので、大手メーカーに参入してもらうのが効果的です」 木材を輸入に頼ってきた日本だが、輸入材が高騰し、北海道や東北で良質な木材の生産が減ってきた現在、例えば、六甲山系の木を「神戸産」ブランドとして市場に出すには、絶好のタイミングだと彼女は言う。 ◾️都市部の緑化はどう進めればいいのか 今年10月にJR大阪駅の北側に緑地が広がる「グラングリーン大阪」が完成するなど、国内だけでなく世界の大都市は、街の魅力のために緑を増やそうと躍起になっている。 どこの都市でも、金太郎飴のように、市街地に「森」をつくる計画であるのに疑問を抱いていた筆者は、神戸で緑化をどう進めるべきかを黒田に投げかけてみた。 すると、彼女はそもそもヨーロッパとアジアでは、都市の成り立ちが違っているというのだ。ヨーロッパでは川の沿岸だと大聖堂、海辺だと港を中心に計画的に都市が整備されたので、街なかには森や林がない。一方で、アジアの都市は農村を飲み込みながら拡大することが多く、街なかに田園や緑地が混じっているという。 日本の都市では、400年以上前は湿地帯だった東京や仙台だと、街から森林までは距離がある。逆に神戸は、街と緑が混在している。市街地の拡大が山に阻まれたほどで、アジア型の都市といえる。とはいえ東日本と較べると、関西は夏が暑く乾燥するので、植えた樹木に過酷な気候だ。 そんな神戸の市街地は、六甲の山々と隣接している独自性をもっと意識すべきであり、六甲山の木々はヒートアイランド現象をやわらげる効果があるので、海岸沿いでは街路樹や公園に力を入れるのが良い。若木を植えて育てながら環境になじませていくのが望ましいと、最後に黒田は語った。 そんな彼女の知見に支えられた神戸市が、これからどのような里山林の活用や都市の緑化施策を打ち出すのかが、注目を集めることになりそうだ。
多名部 重則