ファストフードの高校生バイト時給より低い…作家の"夢の印税"はショボショボでTV出演料5000円という残酷
■作家の収入の内訳 この本を手にとったみなさんが、興味あるのは、作家がお金とどうつき合っているかではないでしょうか。作家の印税は、ほとんどの場合、出来高払いです。通常は、本の定価の5%から10%の間で支払われます。 昔は、刷った部数分だけ支払われていましたが、最近の出版不況に伴って、実売部数だけ支払う出版社も増えてきました。 たいていが、本が出版されてから、翌月から数カ月以内に払われます。小さな出版社だと、売上の支払サイトが長くなるために、作家への支払いも、出版してから半年後、1年後というところもあります。 経済的に困窮している作家は、前借りをするということになるわけです。出版されて、たちまちベストセラーになるというのはごく稀で、初版は数千部からスタートして、じわじわ売れていきます。テレビで取り上げられたり、映画化されたりして、そこから一気に大ブレイクしたりします。 【作家の主な収入源とは?】 ① 原稿料 雑誌や新聞、機関誌などで原稿を依頼された場合に、支払われるのが原稿料です。昔は原稿用紙一枚いくらと依頼時に提示されていました。いまは原稿用紙で原稿を書く人はごく少数派ですから、ページ単位、あるいは一本いくらというふうに設定されています。あるいは謝礼金として一定の金額で支払われます。 ② 印税 原稿を一冊の本として出版されるときに交わされるのが出版契約で、印税についての取り決めもそこに明示されています。 定価1600円の本で、5000部売れたとして、印税率が10%の場合、およそ80万円の収入となります。原稿を書くのに、もしも4カ月を費やしたとしたら、ファストフードでアルバイトしている高校生の時給のほうが高いかもしれません。 ③ 講演 著名な人ならともかく、普通の作家の講演料は10万円から、多くても30万円程度です。地元の商工会議所、公共団体が主催の場合には、もっと低く5万円以下で依頼されることもあります。 ④ テレビ、ラジオ出演 本が売れてきて、ある程度認知されるようになったら、テレビやラジオのコメンテーターとして招かれることもあります。でも、そんなにお金はもらえません。 出演料は、作家は「文化人」の枠になります。「芸能人」とは違い、ギャラは3万円ぐらいが相場ですが、低予算の番組などでは5000円というところもあります。ただ、マスコミで取り上げられたり、テレビにちょくちょく出たりすると、本のPRにもなります。また、それによって知名度が上がると、講演料が高くなるというメリットもあります。 ⑤ テレビドラマの原作、作品の映像化 作家というと、作品がテレビでドラマになったり、映画の原作となって大もうけしている印象があるかもしれません。演劇でも扱われたりすると、もう笑いが止まらないぐらい印税が入ってくる印象があると思います。 ですが、映画の原作の場合、上限が1000万円となっていて、それも出版社と分け合うようになっています。 映画がヒットしても、作家に原作使用料として支払われるのは、せいぜい数百万円ぐらいということも、よくあるのです。その金額だけを見たら大金ですが、それが毎年あるわけではないのが普通です。作家には退職金もないので、その意味では、それほどの金額ではないということです。 ハリウッドだと、何億円も払われるのかもしれませんが、日本でドラマ化、映画化されても、それによる本の売上げ増加以外の収入は、あまり期待できなさそうです。それに、映画化されるような作品を書いて、大ヒットを飛ばし続けられる作家は、日本でもそんなにいません。 ---------- 本田 健(ほんだ・けん) 作家 神戸生まれ。2002年、作家としてデビュー。代表作『ユダヤ人大富豪の教え』『20代にしておきたい17のこと』など、累計発行部数は800万部を突破している。2019年、初の英語での書き下ろしの著作『happy money』を米国、英国、豪州で同時刊行。これまでに32言語50カ国以上の国で発売されている。現在は世界を舞台に、英語で講演、執筆活動を行っている。 ----------
作家 本田 健