【楽天退団の田中将大の“決断”】現役の全うか、指導者も見据えた未来か―岐路に立つ「ハンカチ世代」から学ぶキャリア指標
広島からメジャーへ移籍した前田健太投手(デトロイト・タイガース)は今季途中、中継ぎへの配置転換を言い渡された。DeNAの宮﨑敏郎選手や広島の秋山翔吾選手は健在だが、ソフトバンクの柳田悠岐選手は負傷もあって57試合の出場にとどまった。中日の大野雄大投手も左肘手術からの復活を目指し、今季は2勝(6敗)止まりで来季は正念場を迎える。 「88世代」を牽引してきた田中投手は日米通算200勝の節目まで残り3勝に迫るが、今季は開幕前に行った右肘のクリーニング手術の影響で1軍戦登板は9月28日のオリックス戦1試合のみに終わった。このときは5回4失点で負け投手になり、プロ入り後初めて勝ち星がないシーズンとなった。とはいえ、チームは来季の戦力と見据え、登板機会を設けて契約交渉も行った。 ただ、田中投手にとっては不本意な提示だったようだ。年俸提示は減額制限(1億円以上は40%)を超え、田中投手によれば、球団との話し合いは1回の15分で終わったという。金銭的な条件が不満ではないと否定した上で、「期待をかけてもらって、やりがいを感じるところでやりたい」と、自ら自由契約を望み、球団も来季の保留者名簿に載せないことが決まった。 楽天の条件提示が妥当だったかどうかは結論を急がないとしても、チームに復帰した際には、より好条件のメジャー球団からのオファーを断ったほどの良好だったチームとの関係には、明らかに溝ができたのは間違いない。
将来の「球団幹部」より「現役選手」を選択
30代後半のプロ野球選手は、セカンドキャリアを意識する年代にも差し掛かる。 所属チームの戦力バランスなども考慮し、「まだプレーできる」という“外野”の声があってもユニホームを脱ぐ選手もいる。献身的な姿勢に対して、球団もポストを用意し、指導者としての道を歩むことになる。 好例を挙げれば、巨人時代の井端弘和氏は、2000安打に残り88本と迫りながら、高橋由伸氏が現役を引退して新監督に就任するタイミングで自らもユニホームを脱いでコーチとして支える役回りを選んだ。その後、アマチュア球界や日本代表の指導者を経て、現在は代表監督として侍ジャパンを2026年ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)まで率いることが決まっている。 一方、生涯現役にこだわり、チームを渡り歩く選手もいる。古い話になるが、野村克也氏は南海ホークスを退団した後、「生涯一捕手」と現役にこだわってロッテ、西武と渡り歩き、45歳までプレーした。3度の三冠王に輝いた落合博満氏も選手としてユニホームを脱いだのは45歳だった。