『1122 いいふうふ』監督:今泉力哉 & 脚本:今泉かおり 撮影中に家に電話して確認しました【Director’s Interview Vol.419】
また二人でやってみたい
Q:撮影は四宮秀俊さんですが今回初タッグですか? 力哉:何度かやっていますね。最近だと『窓辺にて』(22)がそうですが、すごい昔に「午前3時の無法地帯」(13 TV)という本田翼さんとオダギリジョーさんの携帯ドラマをやりました。それは山下敦弘監督がメインで、僕は共同監督として何話かやったのですが、四宮さんとはそのときが初めてでした。それ以来ぶりで『窓辺にて』を一緒にやって、今回のオファーはその流れでした。 Q:今回はドラマ撮影ということで、カメラの台数は多かったのでしょうか。 力哉:台数は基本1台でした。ただ、撮影期間の問題もあって、カットバックが増えてきたところなどは2台にしていました。その辺は四宮さんが判断していましたね。「ここは2台でいこう」とか、「さすがにここは大事な芝居だから1台ずつやろう」とか。ほぼ四宮さんにお任せでしたが、気になったところは「ここは丁寧にやりますか」と、1台でお願いしたこともあります。 Q:連続ドラマということで、編集時に映画との違いを意識したところはありますか。 力哉:いや、そこまではしてないですかね。次回への引っ張りなんかは脚本の時点で出来ていますしね。ただ、1話や2話は音楽を多めにつけました。これは直前に、ドラマの「からかい上手の高木さん」(24 TV)をやった影響ですね。「からかい上手の高木さん」ではガンガン曲をつけて、これでも面白くなるんだと感じたので、それで今回も音楽を多めにつけていきました。ただ、ラブホテルのシーンなどは、ほぼ曲を入れていません。それは2人の時間になったら芝居で見せていきたいから。曲をつけるだけで簡単に盛り上がっちゃうし、雰囲気も変わっちゃう。静的なシーンは2人きりにしたいので、曲はつけなかったですね。 Q:2人の住んでいる部屋はすごくおしゃれで素敵な美術でしたが、細かい指示は出されたのでしょうか。 力哉:家にこだわりがあるところは原作に準じています。美術部的にもそこに一番予算を使ったんじゃないかと思うくらい、リフォームする勢いで実際ある場所に立て込んでくれました。細かい指示は出していませんが、四宮さんは画のことがあるから美術確認の際にいくつか指示をしていましたね。特に“なめもの*”などの指示はしていました。ここに棚があると助かるとか。(*なめもの:奥行きのある構図を作るため、被写体とカメラの間に置くもの) Q:岡田さんがキッチンに立っている時に、棚で隠れて首から下しか見えないのも印象的でした。 力哉:あれは元々あった作り付けの棚なんです。あそこをどうするか実は迷ったんですが、いい感じに利用も出来るかなと。うまく使えましたね。 Q:そろそろ最後の質問です。またお二人でお仕事をしてみたいですか。 かおり:私はやりたいです。全然平気ですよ(笑)。 力哉:やるのは大丈夫ですけど、また揉めるのはちょっと嫌ですね。やっぱり家庭なんでね。でも逃げ場が無いから面白いですけどね。他の脚本家さんとやるときとはやっぱり違うなと。たぶんそのくらい深く衝突できていると思う。あと、僕じゃなくて他の監督とやったらどうなるのかは見てみたいですね。どれぐらい衝突してやり取りするのか、興味があります。 Q:かおりさんも、また監督をやってみたいですか。 かおり:いや、どうですかね。監督をやったのはもう14年くらい前かな。そのときはかなり大変だった記憶があるので(笑)。もうちょっと子供が大きくなって家を空けても良くなれば、またやってみたいですね(笑)。 力哉:僕が子供を見ればいいだけなんですけどね。いつも反省と感謝です。 監督:今泉力哉 1981年生まれ、福島県出身。2010年『たまの映画』で商業監督デビュー。13年『こっぴどい猫』でトランシルヴァニア国際映画祭最優秀監督賞受賞。主な作品に『サッドティー』(14)、『愛がなんだ』(19)、『his』(20)、『あの頃。』(21)、『街の上で』(21)、『窓辺にて』(22)、『ちひろさん』(23)など。また「時効警察はじめました(19/EX)や「杉咲花の撮休」(23/WOWOW)にも演出として参加するなど、精力的に活動している。最新作は映画『からかい上手の高木さん』(2024年5月31日公開)。 脚本:今泉かおり 1981年生まれ、大分県出身。地元の看護大学卒業後、大阪で看護師として務めていたが、映画監督という夢を追い求め、2007年に上京し、ENBUゼミナールで映画製作を学ぶ。卒業制作の短編『ゆめの楽園、嘘のくに』が2008年度京都国際学生映画祭で準グランプリとなる。また第7回シネアスト・オーガニゼーション・大阪(CO2)の助成対象作品に選ばれた『聴こえてる、ふりをしただけ』は、2012年ベルリン国際映画祭「ジェネレーションKプラス」部門で、子どもの心理描写を巧みな映像美で綴った演出が高く評価され、子ども審査員特別賞を受賞した。 取材・文:香田史生 CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。 撮影:青木一成 『1122 いいふうふ』 6月14日(金)よりPrime Videoにて世界独占配信中 配信:Amazonプライム・ビデオ ©渡辺ペコ/講談社 ©murmur Co., Ltd. 原作:渡辺ペコ「1122」(講談社「モーニング・ツー」所載) 脚本:今泉かおり 監督:今泉力哉 出演:高畑充希 岡田将生 ⻄野七瀬 高良健吾 吉野北人 中田クルミ 宇垣美里 土村芳 菊池亜希子 内田理央 芹澤興人 前原滉 橋本淳 市川実和子 片桐はいり 森尾由美 宮崎美子/成田凌/風吹ジュン 主題歌:「i-O(修理のうた)」スピッツ(Polydor Records) 企画・プロデュース:佐藤順子 製作・著作:murmur 制作プロダクション:Lat-Lon 2024年 / 日本 / 全7話
香田史生