『1122 いいふうふ』監督:今泉力哉 & 脚本:今泉かおり 撮影中に家に電話して確認しました【Director’s Interview Vol.419】
意見が違った脚本作り
Q:第一話は原作に忠実に作られている印象を受けました。漫画を連続ドラマに落とし込むことはいかがでしたか。 かおり:原作のあるものを初めて脚本にしたのですが、原作全部を入れることはできないので、漫画の面白さを伝えつつも、何を落として何を残すか、そして何を付け加えるかという作業が大変でした。でもそこはプロットの段階である程度決めておいたので、脚本はそれに肉付けして作る感じでしたね。 Q:脚本を書いている途中で、今泉監督に相談したことはありましたか。 かおり:書いている途中はないですね。書き上がったものを読んでもらいました。 力哉:今考えたら、原作モノを書いたこともないのに何で依頼したんだろうと(笑)。しかも初めてなのに何で書けたのか謎ですよね。何となく出来るだろうと思って仕事を振ってはみたものの、出来ている理由が分らないですね。すごいです。 Q:初稿があがった後は、どのようなやりとりがあったのでしょうか。 力哉:最初はちょっと長かったので、どこを落とすかの話が出ました。Amazonの作品は地上波と違って尺がガチガチに決まっているわけではないので、どこまで調整して、どれくらい切らなきゃいけないかは結構曖昧でした。各話ほぼ1時間ぐらいのドラマになっていますが、脚本改稿の過程で、もっと短くてもいいという話も出たんです。でもそうなると表現できることも変わっちゃう。あとは物理的な予算や撮影日数も含めて、いろいろと試行錯誤していった感じですね。直す方向性に関しては、二人の間に意見の違いもありました。「ここ、いらないんじゃない?」と言うと、「そこは絶対落とさない方がいいよ」とか(笑)。結局そういうところは残したのですが、できあがってみたら絶対にあってよかったシーンでしたね。あとは細かい部分ですけど、例えば「頷く」とか、役者の動きのト書きが結構細かく書かれていて。でもそこは俳優に任せていいんじゃないと、僕が書き直す際にちょっと消したりしましたかね。 Q:かおりさんも監督をされていたが故に、画を想像してト書きを書かれたのでしょうか。 かおり:そうですね。これぐらい間を空けて欲しいとか、間を空けて欲しいがために「ちょっと頷く」とか。結構入れてしまいました。 力哉:やっぱり脚本家というより監督だなと。だからそういう話になったときは「監督をしたら?」と思いました(笑)。たぶん頭で見えているものが、僕よりも具体なんだと思う。俺は具体で想像して撮ることはないので、もうそこはタイプが違う。そういう細かなニュアンスも書き込む脚本だったら、たぶん僕が撮るよりは本人が撮った方が面白くなると思いますね。 Q:“今泉力哉が演出をする”ということは念頭にあったでしょうか。監督の作風はかおりさんが一番ご存知ですよね。 力哉:そこまで意識してなかったと思いますよ。僕の映画をすべて観ているわけでもないですし。実は『愛がなんだ』も観てない(笑)。でも逆にそれが良かった。 かおり:原作を読んで、渡辺ペコ先生もセリフにすごくこだわりのある方だと思ったので、あまり原作から変えずに書き進めました。一方、夫もセリフにはこだわりがあると前々から言っていたので、語尾とかはそっちで好きに調整して、と伝えました。 力哉:その辺は、他の脚本家さんとやるときも、手を入れさせてもらえるかどうかは最初にちゃんと許可を取ります。 Q:俳優がセリフをアレンジすることについては、いかがですか。 力哉:ちゃんと脚本を仕上げていれば、脚本から逸脱する俳優ってそんなにいません。ただ、俳優が生理的に言いにくい場合などは、脚本家さんにリスペクトを持ちつつも現場で微妙に調整することはありますね。でも、今回はアレンジとかそんなになかったです。優秀な俳優ほど、そのままで成り立たせてくれますね。 Q:以前は差し込み(撮影期間中に追加される一部分のシーンの脚本)を結構やられていたと聞きましたが、今回はどうでしたか。 力哉:今回は少ないですね。差し込みは、脚本家がいるかいないかが大きいです。自分でオリジナル脚本を作っている場合は、差し込むことも多いです。撮影前日まで「これ面白いかな?」とずっと悩んでいるので、少しでも面白くなりそうなら前日や当日にも差し込みます。スタッフやキャストに気を遣いつつですがね。