マネスキンがサマーソニックを再び席巻 絶対王者として2度目の伝説を作った夜
イーサン、トーマスの覚醒
長尺のインスト・パートから雪崩れ込み、赤い照明に照らされながら勇ましく不穏なインダストリアル・ミュージックを奏でる「GASOLINE」では、イーサンのドラムに進化の兆しを感じた。鉄球のようなキックとハード・ヒットはそのままに、グルーヴ感の引き立て方が飛躍的に向上。クイーンと比較されがちなマネスキンだが、この夜の張り詰めた空気感、硬質かつ重厚な鋼のアンサンブルから連想させられたのは『Presence』期のレッド・ツェッペリン。イーサンが力強くリズムを注入し、ヴィクトリアがメロディックなベース・ラインを奏でることで、ジミー・ペイジ役のトーマスは自由奔放に暴れ回ることができる。 ここまでラウドでアップビートな楽曲を連発してきたのもあり、「今日のステージはファッキン・ホットだ」と言って座り込みながら「CORALINE」を歌うダミアーノ。歌の節回しはラテン・ロック、哀愁と複雑な曲構成はイタリアン・プログレを想起させる初期のナンバーで前半戦を終えると、「Beggin’」ではダミアーノが第一声を発するなり待ってましたの大歓声。コール&レスポンスの応酬や、スタンド席までジャンプの輪が広がる光景を見渡しながら、ダミアーノは2年前にこのカバーを披露したときと同じように「日本人は大人しいんだって聞かされてきたけど、嘘っぱちじゃないか!」と思ったかもしれない。 「FOR YOUR LOVE」では、半裸になったダミアーノが持つライトに照らされながら、トーマスが荒々しくファンキーなソロを披露。必殺の人気曲「I WANNA BE YOUR SLAVE」でも嬌声とハンドクラップが鳴り響くなか、張り裂けんばかりのノイズで熱狂空間をドライブさせた。さらに息つく暇もなく、リズム隊がヘヴィに激突するインスト・パートを挟んで「MAMMAMIA」へ。ダンサブルな躍動感とともに「マンマ・ミーア!」とみんなで叫んだあと、ツェッペリン色が濃厚になった「IN NOME DEL PADRE」ではトーマスがPAテントまで突っ込み、観客に担がれながらソロを弾き倒す。この日はギターヒーローとして覚醒した彼の独壇場で、何度も花道に飛び出してはアクロバティックなプレイで魅了していた。 ついに終盤。煽情的な「BLA BLA BLA」のあと、本編ラストの「KOOL KIDS」では前回のジャパン・ツアーと同様、選ばれたオーディエンスを壇上に呼び寄せ、即席のパーティ空間を作り上げる。「魔音棲琴」の漢字Tシャツを着た青年がトーマスの横でエアギターしたり、日の丸とイタリア国旗が一緒に揺れていたりと、マネスキンと日本の蜜月を象徴するような光景だった。最後はエディ・ヴァン・ヘイレンばりのタッピング奏法も披露したトーマスが、エフェクターをいじり倒してノイズを撒き散らしたまま本編は終了した。