子どもを“スポーツ好き”に育てる方法。東大准教授が語る「運動神経ない」と絶対に言ってはいけない理由
子育てに直面したときに、巷で耳にする、あんなウワサ、こんな説。それってほんとうに根拠があるの? これまで、気になる論文を読んできた、情報理工学博士の山口先生が、世の中にあふれる「子育て説」を科学の面から一刀両断。現在子育てに悩んでいる方、なにかヒントが見つかるかもしれませんよ! 今回は、「運動神経」について、お話しします。 【前回を読む】「スポーツ、いつからやらせるべき?」子どもの運動能力が高まる“ゴールデンエイジ”とは
そもそも「運動神経」とは?
前回、運動をやらせるべきタイミングのゴールデンエイジ(身体能力が発達する時期)の話をしました。 そのときに、子どもに対して「運動神経ないね」と言わない方がよいと書きましたが、その理由について話したいと思います。 そもそも「運動神経」ってなんでしょう? 運動神経というのは、ゴールデンエイジの第一期(1~6歳)に発達する神経回路の複雑性のことを指している、と考えることにします。 この運動の神経回路は、この時期にその子が経験した動きの“複雑性”によって決まります。つまり、複雑である方がいいということです。 単純にボールを投げた経験がない子どもは、ボールを投げるために必要な神経回路は育ちません。またジャンプをしたりクマ歩きをしたりなどの動きも、やったことがあるかないかで、運動神経の発達に影響します。 この時期にさまざまな動き方を経験しないと、ルール化されたスポーツになじむのに時間がかかります。 経験がない動きが多すぎて、うまくできません。その神経を一つひとつ最初からつくらないといけないからです。
かけ足だって、練習次第で速くなる
例えば、「かけっこ」を取り上げてみましょう。 テレビのバラエティ番組で、かけっこがものすごい遅い人をとりあげて、専門家が動き方を教えることによって、走るのが速くなるということを見たことがある人もいると思います。 “かけっこ講座”の専門家がいて、体の動き方を教えるだけで誰でも足が速くなるということがわかっています。 つまり、運動神経がないというのはその動作をしたことがない、経験をしたことがないという事柄を指すだけであって、その能力が伸ばせないとは限りません。 子ども達はどんな運動能力でも身に付けることができるので、親の興味によっていろいろなスポーツをさせてみるのがいいと思います。 一方で、ひとつのスポーツしかしないと、その神経回路しか発達しないことになるので、脳や体の発達としてはあまり適切ではありません。