『Believe』4月期の民放ドラマ最高視聴率も…主演・木村拓哉へ残った「モヤモヤする違和感」
「開局65周年記念作品」と銘打たれた木村拓哉主演の木曜ドラマ『Believe-君にかける橋-』(テレビ朝日系)の最終回が6月20日に放送され、世帯平均視聴率13.2%。現時点では4月期の民放ドラマ最高視聴率をマークしている。 【写真】すごい!ドラマロケで東京地裁前でスタンバイするキムタクの目力がすごい! 今作で木村が演じているのは、大手ゼネコンに所属する設計者・狩山陸。橋づくりに人生を賭ける狩山は、事故の責任を負わされ刑務所に収監されるも脱獄。事故の真相を突き止めるために逃亡生活を送るといったヒューマン・エンターテインメントである。 最終回で再逮捕されたものの、龍神大橋崩落事故の責任を問われた業務上過失致死傷については再審の末、新たな真実が明らかになっていく。 そして迎えたラストシーン。 碓氷峠のめがね橋の上から、設計図を紙飛行機にして飛ばす。その狩山の姿にネット民も大興奮。“キムタク伝説”に、新たな1ページを加える名場面となった。 しかし最終回を終えた今も、モヤモヤする違和感が晴れないのは私だけだろうか。 「木村さんは50歳を前にして、ドラマ『グランメゾン東京』(TBS系)では名声と信用をすべて失った二つ星レストランのシェフ。ドラマ『教場』シリーズ(フジテレビ系)では、過去に闇を抱えた白髪に義眼姿の警察学校教官。 さらにドラマ『未来への10カウント』(テレビ朝日系)では、やさぐれた元高校4冠のアマチュアボクサーを演じるなど、近年では“憧れのヒーロー像”を封印して、挫折を乗り越え這い上がろうとする役どころに挑戦してきました。今作で演じた肋骨の痛みに耐えながら逃げる狩山の姿は、キムタク史上“もっともかっこ悪い”役どころ。どん底からの復活劇を演じることで、新境地を切り開きたい。そんな思いが、ひしひしと伝わってきました」(ワイドショー関係者) しかし今作で、俳優・木村拓也は“何をやってもキムタク”を封印することができたのだろうか。残念ながら、私にはそうは思えない。 「第3話で逃亡生活を送る狩山の『逃げるのが嫌いだった。どんなに不利な場面でも、背中だけは向けなかった。“意地を張るな”“カッコつけるな”と笑われたけど、それが俺の筋の通し方だった』というモノローグが登場します。 これこそが今作の主人公・狩山に託した木村さん自身の生き方にも通じる矜持。つまりどんなにカッコ悪い役を演じても、木村拓哉は変わらない。そう宣言しているように聞こえました」(制作会社プロデューサー) そうした思いは最終回。橋の“崩落事故”を計画して、収監された帝和建設の磯田社長(小日向文世)と対峙するシーンを見て、ますます強くなった。 「君はよく夢を語っていましたね。日本中、いや世界中に橋をかけたいって。それを聞かされるたびに腹が立ったんだよね。綺麗事じゃないか。 人は金や地位のために動くもの。それが心理だ。それを君は夢、夢、夢。君が橋の夢を語るたびに、私は君を嫌いになった。狩山君、働くことは夢を捨てることです。私はそれを君に思い知らせたかったのかもしれません」 そう語る磯田社長の思いこそ、木村拓哉が演じる主人公への違和感の正体なのかもしない。 「SMAPの活躍と歩調を合わせるように“憧れのヒーロー”を演じることでスターダムを駆け上っていった木村さん。しかし50代を前にして、人生の復活にかける新たなヒーロー像をこれまで模索してきました。 しかし木村さん自身、敗者復活をかけるほどの大きな挫折を味わった経験はおそらくありません。木村さん演じる主人公が“夢”を語るたびに違和感を覚えるのは、そんな背景が見え隠れするからなのかもしれません」(前出・プロデューサー) 確かに7年前のSMAP解散をきっかけに、木村に対して逆風が吹き荒れた時期もあった。一連の“ジャニー喜多川の性加害問題”で、損害を被っていることも事実だ。 しかし今もなお、木村拓哉が燦然と輝くスターであることに変わりない。翻って「新しい地図」を広げた3人はどうだろう。 「香取慎吾は今年出演した番組で、『2017年はなかなかの時期で仕事も何も一度なくなったぐらいの時期』と当時を振り返っています。当時メディアでは『香取慎吾引退』『海外に留学か』の見出しが躍り、その苦しそうな様子を間近で見ていた盟友・草彅剛は『わかった、オレは慎吾と南の島で暮らす』。香取に寄り添い、そう宣言していたことも告白しています。それほど『新しい地図』の3人は、追い詰められていたのです」(前出プロデューサー) 新しい地図を広げ、崖っぷちから蘇った3人。地獄を見ることなく夢を語る木村拓哉。このギャップは、やはり如何ともしがたい。 しかし変化を恐れないのなら、チャンスはある。新たな作品、そして監督との出会いがまったく違った木村拓哉を引き出してくれるかもしれない。 現に’06年。視力を失い一度は命を絶とうとした主人公・三村新之丞(木村)が、武士の一分を通すために復讐に挑む、山田洋次監督映画『武士の一分』に主演して、新たな輝きを手に入れているのだから……。 文:島 右近(放送作家・映像プロデューサー) バラエティ、報道、スポーツ番組など幅広いジャンルで番組制作に携わる。女子アナ、アイドル、テレビ業界系の書籍も企画出版、多数。ドキュメンタリー番組に携わるうちに歴史に興味を抱き、近年『家康は関ケ原で死んでいた』(竹書房新書)を上梓。電子書籍『異聞 徒然草』シリーズも出版
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