防衛増税、開始時期見通せず 首相は年内決着意欲も与党は所得税議論に慎重論
令和7年度税制改正で、防衛力強化のための増税の開始時期が焦点の一つとなっている。厳しさを増す日本の安全保障環境を踏まえ、石破茂首相は年内の決着を目指す考えを示してきたが、与党内では増税対象となる3税のうち、所得税の議論を後回しにする案も出るなど流動的な情勢だ。 【ひと目でわかる】過去最悪レベル…自衛官の採用達成率 政府は防衛費の増額に必要な追加の財源について、9年度までの5年間で14・6兆円程度と見込む。複数年度の費用を積み立てておく「防衛力強化資金」で4・6兆~5兆円強、決算剰余金の活用で3・5兆円程度、歳出改革で3兆円強を捻出し、残りは増税でまかなう枠組みだ。 増税分に関しては、法人、所得、たばこの3税で9年度までに1兆円強を確保する。このうち法人税は大企業を対象に税額に対して4~4・5%を新たに課し、6千億~7千億円の税収増を見込む。残りの2税でそれぞれ2千億円の増収を図る。所得税は東日本大震災の復興特別所得税の税率を1%下げる代わりに、防衛増税分として1%を付加し課税期間を延ばす。たばこ税は1本当たり3円相当を段階的に引き上げることとした。 防衛増税は5年度税制改正大綱に「9年度に向けて複数年かけて段階的に実施する」と書き込まれた。だが6年度税制改正では、定額減税の実施や自民党の派閥パーティー収入不記載事件に対する世論の風当たりもあって結論を出せなかった。 与党の税制調査会が防衛増税を政策的課題として検討を続けるが、12月に入った今も、防衛増税を巡る議論は低調だ。それどころか国民民主党との政策協議で、年収が103万円を超えると所得税が生じる「103万円の壁」の引き上げを話し合いながら、所得税の増税時期を決めることに慎重論も出始めている。 加藤勝信財務相は11月15日の記者会見で、防衛力整備を支える財源について「税制措置をはじめ安定的なものであることが不可欠だ」との考えを強調している。話を前進させるため、与党内には法人、たばこの2税を先行して決める案も出ているが、難航は避けられそうもない。(米沢文)