唯一無二の世界 これもまた、間違いなく走りの歓びのひとつのかたち モータージャーナリストの島下泰久がロールス・ロイス・ゴーストなど5台の輸入車に試乗!
ついアレコレと語りたくなるのがガイシャの魅力!
モータージャーナリストの島下泰久さんがエンジン大試乗会で試乗した5台のガイ車がこれ! アウディA8 60TFSI eクワトロ、ジープ・ラングラー・アンリミテッド・ルビコン4xe、ミニ・ジョン・クーパー・ワークス、ポルシェ・カイエンSクーペ、ロールス・ロイス・ゴーストに乗った本音とは? 【写真26枚】モータージャーナリストの島下泰久さんがエンジン大試乗会で試乗した5台の注目輸入車を写真で見る! ◆アレコレと語りたくなる 自分にとって“ガイシャ”は、自分を見つめ直すための鏡のようなものかもしれません。いつも書いていることですが、世界旅行するのと一緒で、彼我の違いや差を認識することが、自分や日本や日本車の、一層の理解に繋がると言いますか……。いや、試乗中にはそんなに深く考えているわけではなく、ひたすら楽しんでいるだけですよ。でもそう考えると乗った後の印象が濃くて、ついアレコレと語りたくなるのがガイシャの魅力かもしれません。電動化時代になっても、こういう楽しさはキープし続けて欲しいなと思います。ちなみに今回はEPC会員の皆さんと、そんな時間を共有できたわけですが、それもまた楽しさを倍加してくれたなと思います。単に話すのではなく、共通体験をベースに語り合うことで、クルマへの理解も楽しさも、一層深まる。もっともっとこういう機会、あるといいですね! ◆アウディA8 60TFSI eクワトロ「異例の軽やかさ」 その走りの印象は、とても軽やかということに尽きる。いかに軽いのかと試乗後にスペックを見たら、実際には車重は2350kgと、V8エンジン・モデルよりもむしろ200kg近く重くなっていて驚いてしまった。おそらく、その軽やかさはボディ自体の慣性質量の小ささ、軽めのステアリングに合わせたアダプティブ・エアサスペンションやクワトロなどシャシーの躾け、電気モーターの高レスポンス等々の相乗効果なのだろう。様々なテクノロジーを駆使できる上級モデルほどむしろすべてがしっくり来る、あるいはアウディ純度を増していくようにすら感じられる、このブランドの面白いところは今も健在だった。これだけ気持ち良い走りが出来るのなら、アウディはもっとハイブリッドを活かした方がいい。それこそ再来年にはF1にも出るのだし。ともあれ、このセグメントでは異例の軽やかさとクールな内外装の仕立てというアウディの “らしさ”は変わっていない。いや、更に進化 ◆ジープ・ラングラー・アンリミテッド・ルビコン4xe「この4xe一択!」 ジープにプラグイン・ハイブリッド。最初は何とも似つかわしくない組み合わせに思ったのだが、乗ってみるとこれが嬉しい驚きをもたらしてくれる1台だった。十分に充電された状態ならば、パワースイッチを押してもエンジンは始動せず、まずは電気モーターでの走行になる。嬉しいのは力強く滑らかなだけでなく、繊細な速度コントロールが可能なこと。市街地走行での扱いやすさは想像以上だし、きっとオフロードでも、このドライバビリティは大いに力になるはずだ。もうひとつの魅力が動力性能だ。エンジン単体でも十分なスペックを有するというのに、そこに電気モーターの推進力が加わるものだから、加速はグイグイと力強い。うかつに踏み込むと身体がのけぞるほどの加速には笑いが止まらない。つまり似つかわしくないどころか、電動化という潮流をうまく使って、ラングラーの持てる能力を、そして魅力をプラグイン・ハイブリッドが更に引き伸ばしているということ。今、自分で乗るならば、この4xe一択である。 ◆ミニ・ジョン・クーパー・ワークス「これはこれで未だ魅力アリ」 実はほんの数日前に、ポール・ウェラーが娘のリア・ウェラーと並んで、おそらくはミニ・クラブマンの前に立つ写真を見て、そのブリティッシュ・アイコンとしての魅力を再確認していたミニ。おかげで試乗は、とてもテンションの高まるものとなった。室内に乗り込むと、ミニはインテリアが刷新されて、ドライバーの正面に楕円形の液晶パネルが備わっていた。しかしながらアップデートされても、独特の雰囲気は健在。太いリムのステアリング・ホイール、分厚いダッシュボードに、ガッシリしたピラーなどによる、ちょっと重々しい感じも変わらない。走らせても、やはり剛性感たっぷりで骨太。しかも試乗車はJCWだけにサスペンションは締め上げられ、エンジンは低音のエグゾースト・ノートを響かせる、まさしくオールド・スクールの走りっぷりだ。デザインも走りも、ここまで独自のスタイルを頑固に貫いてきたミニ。新型は雰囲気がちょっと変わってミニマリズムを前面に出してくるようだが、これはこれで未だ魅力アリ。そう思えたのである。 ◆ポルシェ・カイエンSクーペ「まさに原点回帰!」 数多あるクーペSUVの中でもポルシェ・カイエン・クーペほどその姿がしっくり来るモデルは無い。何しろブランドの支柱である911がクーペなのだから、むしろこれこそが本来あるべき姿だとすら思えてくる。試乗したカイエンSクーペは、実際に走らせても、やはり“らしさ”濃厚だった。ボディ、シャシーの剛性感は半端なく、これまたガッチリとした手応えのステアリングホイールを切り込むとクルマ全体がひとつの塊かのようなソリッドなコーナリングを披露する。そしてエンジンはなんと、2.9リッター V6ツインターボから4.0リッター V8ツインターボに格上げされている。かつてならカイエン・ターボのスペックである。全域に力がギッシリ詰まっていて、しかも回せば吠える!この迫力に、やっぱりこうでなくっちゃと思わずニヤニヤしてきてしまうのだ。衝撃的だったデビューから気づけば20年以上が経過したカイエン。次作はBEVにと言われる中で登場した最新作は、まさに原点回帰のポルシェらしさが改めて際立つ1台になっていたのだ。 ◆ロールス・ロイス・ゴースト「唯一無二の世界」 最初は思わず二度見してしまったが、よく見ると派手な中にどこか漂うノーブルなカラー・コーディネートに、すぐに魅入られてしまった。こういうパーブルの着こなしは、やはり英国車ならではだ。走り出すと、そこにはまさにロールス・ロイスの世界。静謐、滑らか、けれどどこからでも力が湧いてきて、まさにゴーストよろしくスーッという音が聞こえるかのように移動していく。あらゆる入力を柔らかくいなす丸い乗り心地も、絶品と言うほかない。さすがなのは、それなら自動運転にすればなどとは思わせないことだ。つまり、ドライバーズ・カーとしての快感もちゃんと備わっている。スピリット・オブ・エクスタシーを遠くに見やりながら、鷹揚なそのクルマの動きを味わっていると、高い位置から見下ろすようなドライビングポジションも相まって、それこそクルーザーでも操っているかのよう。心が開放される。これもまた、間違いなく走りの歓びのひとつのかたちである。唯一無二の世界にひととき、存分に浸ることができたのだ。 文=島下 泰久 (ENGINE2024年4月号)
ENGINE編集部
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