新型ミニ・クーパーは中身の進化がスゴい! もはやオリジナルとは大きく違うけどコレはコレでアリ!?
EVの長所をしっかり
バルセロナで対面した新型ミニ3ドアは、ボディ全体がツルッと滑らかで、しかもエクステリアに余計な装飾のないシンプルな佇まいを見せる。それでも安っぽさをちっとも感じさせないのは、デザインそのものが秀逸なことにくわえ、ボディパネルの面精度が高く、パネルとパネルのすき間などが緻密にコントロールされているからにほかならない。 しかも、これほどシンプルなデザインなのに未来感に溢れているのも興味深いところ。ちなみに、このシンプルなデザイン言語のことをミニは「カリスマティック・シンプリシティ」と、呼ぶ。 シンプルなのにクオリティが高いデザインはインテリアもおなじで、ダッシュボード上の丸い大型ディスプレイを除けば大がかりな仕掛けはなにもないものの、こちらも素材の質感が高かったり、ダッシュボードを布で覆うセンスが冴え渡っていたりして、とてもオシャレ。 なかでも、ステアリングのスポーク代わりやダッシュボード上のアクセントとして用いられているリボン状の布も、ちょっとしたアイデアではあるけれど、気が利いていて魅力的だ。 今回試乗したのは、冒頭で記したとおり、高性能版のクーパーS Eのみ。ゴーカートフィーリングを標榜するミニだから、“クーパーS”だってそれなりに乗り心地は硬いのがミニの伝統だったけれど、新型EVのミニ・クーパーSEは拍子抜けするくらいサスペンションが滑らかに動いて快適。しかも、ボディの剛性感が高いので、ドシンと大きな衝撃がくわわってもビクともしない。それは大きな安心感を与えるとともに、高い質感にも結び着いていると思う。 そしてこのしなやかな足まわりが、ワインディングロードでは想像もできないほど正確で扱い易いハンドリングを生み出していた。ソフトなサスペンションでもコーナーを意のままに駆け抜けられるのは、EVならではの低重心設計にくわえ、サスペンションの設計や設定が適切な証拠。この辺はBMWの“駆け抜ける歓び”と、おなじ思想が取り入れられた結果といえるだろう。 218psのモーターはもちろんパワフルで静か。しかも、モーターらしく低回転域(=低速域)からアクセルペダルを踏んだときのレスポンスが素晴らしく、その俊敏さは文字どおりゴーカートフィーリングに通じると感じた。 というわけで、デザイン、クオリティ、乗り心地、ハンドリング、そして動力性能となにひとつ不満を覚えなかった。 その最大の理由は、EVの長所をしっかりと受け止めたうえで、それを最大限生かす真面目な設計が施されたことにあるはず。中国製だからといってクオリティに不安を抱くことも、どうやら時代遅れな思い込みであることは間違いなさそうだ。
文・大谷達也 編集・稲垣邦康(GQ)