「審査員が金品や接待を求めた」過去も 元審査員が明かす「レコ大」の裏側
ジャニー氏のレコ大への怒り
しかし、審査はジャニー氏の思い通りにならず、忍者が受賞したのはポップス部門の最優秀新人賞。 「ジャニー氏はポップスと位置付けられたことが許せなかった。『ポップスグループをつくったわけじゃない』と憤った」(元審査員B氏) 以降、ジャニー氏はレコ大を辞退する。 「それまでは旧ジャニーズ事務所がレコ大を盛り上げるのに一役買っていた。1987年の第29回は近藤真彦さんの『愚か者』が瀬川瑛子さんの『命くれない』などと争った末、大賞を獲った。1988年の第30回は光GENGIの『パラダイス銀河』が五木ひろしさんの『港の五番町』などと競い、大賞を得た。旧ジャニーズ事務所の撤退は痛かった」(元審査員A氏) 2003年の第45回でSMAPの「世界に一つだけの花」はレコ大の候補だったが、ジャニー氏はとうぜん辞退した。 当時、SMAPはこうコメントした。 「歌詞の中にもある『NO.1を目指すよりはOnly oneを大切にしたい』というメッセージを貫きたい」 これを信じた音楽関係者はいない。 「ジャニー氏の存命中、旧ジャニーズ事務所の方針は彼と副社長のメリー喜多川氏が全て決めていたのは知られている通りです」(元審査員A氏) ジャニー氏とレコ大の関係がやっと雪解けを迎えたのは2010年の第50回。近藤真彦(60)が「心 ざんばら」で最優秀歌唱賞を得た。長い対立だった。1980年代以降、ニューミュージックやロックの歌手の一部はレコ大に価値を感じなくなっていたが、ジャニー氏もそうだったようだ。 個人視聴率は2023年の第65回が第1部4.5%、第2部7.0%。同年の「NHK紅白歌合戦」は第1部22.0%、第2部が23.5%だから、随分と見劣りする。一方で番組の性質が違うから、単純には比べにくい。 レコ大はその年の優れた歌を決めるコンクール。紅白は旧作も取り上げるフェスティバルなのだ。民放も今は「FNS歌謡祭」(フジテレビ)などフェスティバルばかりである。 「レコ大は作曲家協会によるコンクールですので、たとえ視聴率が獲れなくなってTBSが放送をやめようが、続きますよ」(元審査員A氏) 視聴率のみを追い求めるのなら、フェスティバルが圧倒的に有利なのである。ただし、コンクールなのだから、現行形で続けなくてはならない。 高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ) 放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社し、放送担当記者、専門委員。2015年に毎日新聞出版社に入社し、サンデー毎日編集次長。2019年に独立。前放送批評懇談会出版編集委員。 デイリー新潮編集部
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