「日本ワイン」造るワイナリー急増 5年間で1・5倍 愛好家の支持も
産地表示可能に
国産ブドウだけを原料とした「日本ワイン」を製造するワイナリーが増えている。国税庁によると、国内のワイナリー数は500カ所近くに上り、5年間で1・5倍になった。ワインは同じ品種のブドウでも、産地によって風味が変わるとされる。産地名などを表示できるルールが設定されたことで、ワインの個性が伝わりやすくなったことも奏功し、愛好家の支持を集めている。 【グラフで見る】国内のワイナリー数 日本ワインは「国内製造ワイン」の中でも、輸入原料は使わず国内で収穫されたブドウだけを使って国内で製造されたワインを指す。同庁は2018年から、こうした定義を適用し、ラベルの表示ルールも変更。日本ワインに限り、一定の条件を満たせば産地名や収穫年などを表示できるようにした。例えば産地名は、その産地で収穫されたブドウを85%以上使い、醸造地も同一産地である場合に表示できる。 同庁の調査では、国内のワイナリーは23年1月時点で468カ所。そのうちブドウ栽培も手がけるのは85カ所と5年間で1・3倍に増えた。ワイナリーは佐賀、沖縄の両県を除く45都道府県に存在する。 数が多い都道府県の一つが長野県だ。県が把握する範囲では、24年3月末時点で80カ所に上る。過去5年間で38カ所増えたが、その多くで日本ワインが造られている。 22年に同県東御市でワイナリーを開いたのが、田辺良さん(43)だ。地域で栽培が盛んな「巨峰」をはじめ「シュナン・ブラン」など7品種のブドウを1・7ヘクタールで栽培し、10種類ほどのワインを年間約4500リットル製造する。田辺さんは、同市のように寒冷地のワインは酸味が強い傾向があるが、温暖な地域のワインは甘い香りがありトロピカルな風味の傾向があるなど、地域性が豊かだという。ワインは電子商取引(EC)サイトなどで販売されるが、産地や品種名を表示できることで「消費者が産地を想像しながらワインを楽しめるようになった」(田辺さん)。
特区制度影響も
国内で最もワイナリーの数が多い山梨県のワイン酒造組合は、ワイナリーの増加には「『ワイン特区』制度の影響も大きい」という。 本来、醸造免許の取得は最低でも年間6キロリットルの製造が必要だが、構造改革特区法による酒税法特例の認定地域(ワイン特区)になると、要件を満たせば同2キロリットルに緩和される。そのため認定地域では個人経営の農家ら小規模な事業者でも、ワイン製造が容易になる。日本ワイナリー協会は、特区制度で「農家に加え、ワイン愛好家自身がワイナリーを開くことも増えている」と話す。(森市優)
日本農業新聞