LUUPと交通違反、タイミーと闇バイト、メルカリとさらし行為――“性善説サービス”はいずれ崩壊するのか
本来負担すべきコストを利用者のモラルに依存している
性善説サービスは本来負担すべきコストを利用者のモラルに依存しているため、利益率が高く、資金調達力があって当然である。 そんなサービスが上場や多額の資金調達によって得た資金をどう活用すべきかについて考えれば、まず人員の増強に充てるべきだ。モデレーションを担う専門スタッフの採用や、トラブル対応に迅速に対応できるカスタマーサポートの強化は、利用者の安心感を向上させる最も効果的な手段である。 一方で、こうした投資により利益率が一時的に低下することは避けられない。しかし、それを受け入れることこそが長期的な価値向上につながる。性善説のもと、コストを利用者側に転嫁し、必要な投資を怠れば、節約した分以上に市場からの評価が下がる可能性が高い。 タイミーは闇バイト問題などもあって時価総額が高値から800億円以上も吹き飛んだ。十分な資金力があるのに、運営側がコントロールできない利用者の誠実性に頼るという危ない橋を渡るべきではない。企業価値とブランドを損ねるリスクは決して小さくないのだ。 利用者、従業員、投資家の信頼を取り戻すための努力が、最終的には自由と安全が共存するサービスモデルの実現につながり、企業価値を高める鍵となる。短期的な利益を犠牲にしてでも、運営基盤を強化するという決断が求められるのではないか。
筆者プロフィール:古田拓也 カンバンクラウドCEO
1級FP技能士・FP技能士センター正会員。中央大学卒業後、フィンテックベンチャーにて証券会社の設立や事業会社向けサービス構築を手掛けたのち、2022年4月に広告枠のマーケットプレースを展開するカンバンクラウド株式会社を設立。CEOとしてビジネスモデル構築や財務などを手掛ける。
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