「お酒を飲む、飲まない」は関係ない…肝臓専門医が警告「脂肪肝になりやすい人」がやっている水分の摂り方
■「水分プレローディング」で脂肪が落ちる 肝臓から脂肪を落とす水の飲み方のポイントは“水を食前にコップ1杯飲む”こと。この方法を「水分プレローディング」と呼んでいます。プレとは「事前」、ローディングとは「補給」を意味し、「水分を事前に補給する=食前に水を飲むこと」になります。 体内の塩分濃度が上がると、体は水分不足で飢餓状態と認識し、脂肪をため込もうとする生体システムが自動的に働きます(※)。だから、食事によって塩分濃度を上げすぎないように水を飲んでおけば、余計な脂肪の蓄積も防げます。しかも、食前に水を飲めば満腹感が早まるので、食事量を減らす効果も期待できます。 ※Natalia Rakova, et al.(2017). Increased salt consumption induces body water conservation and decreases fluid intake. Journal of Clinical Investigation. 127(5):1932-43. 「水分プレローディング」の効果 満足感を得やすい 食前に水分を摂取することで、満腹感が早く訪れます。食事量が自然に減って、食べすぎを防ぎやすくなります。 間食が減る 水を事前に飲むことで食事の満足度が高まり、次の食事までの間食を減らしやすいという報告があります。 エネルギー消費を増やせる 水を飲むと一時的に代謝効率が上がり、エネルギー消費が増加。食べても、脂肪を蓄積しにくい体質に変わっていきます。 ■肝臓を元気にする水の飲み方5つのポイント 1 こまめに摂取する 一度に大量に飲むのではなく、こまめな水分摂取が効果的。ちょこちょこ体を潤すことが、絶え間ない代謝を促して肝臓から脂肪を落とす重要なカギ。起床後にコップ1杯、午前中に500mlを数回に分けて飲み、午後に500mlを数回に分けて飲み、入浴の前後にコップ1.5杯の水を飲むようにすると、習慣にしやすいでしょう。食前の水分摂取もお忘れなく! 2 常温か白湯を飲む 冷たい水は胃腸を冷やして消化・吸収を妨げやすい。内臓が冷えると代謝が下がりやすいので、常温か白湯で飲むことをおすすめします。 3 汗をかくときは水にたくあん2枚をプラス たくさん汗をかくからとスポーツドリンクを飲むのはNG。500mlに糖質23g以上(スティックシュガー8本分相当)含まれるものもあり、脂肪肝の改善には向きません。その代わりに0.6g分程度の塩分をとれるたくあん2枚をプラスすれば、脱水症状を防げます。 4 無糖の炭酸水で代用可 砂糖を含まない炭酸水なら、水の代わりにしてOK。お腹が膨らむので、食べすぎを防ぐ効果も期待できます。ただ、1日1.5Lの水分摂取量は必須。量を飲みづらい場合は、普通の水も含めて合計1.5Lの水を摂取してください。お茶やブラックコーヒーも含めてかまいませんが、緑茶やコーヒーには利尿作用があるので1日コップ3杯までに。 5 トイレに行くたびに飲む トイレ後すぐに水を飲まないと体に不具合が起こるわけではありません。ただ、水分摂取を思い出しやすいタイミングなので、“出したら飲む”を習慣づけると、飲み忘れを防ぎやすくなります。 ---------- 尾形 哲(おがた・さとし) 肝臓外科医 長野県佐久市立国保浅間総合病院外科部長、同院「スマート外来」担当医。医学博士。一般社団法人日本NASH研究所代表理事。1995年神戸大学医学部医学科卒業、 2003年医学部大学院博士課程修了。パリ、ソウルの病院で多くの肝移植手術を経験したのち、2009年から日本赤十字社医療センター肝胆膵・移植外科で生体肝移植チーフを務める。さらに東京女子医科大学消化器病センター勤務を経て、2016年より長野県に移住。2017年スタートの「スマート外来」は肥満解消と脂肪肝・糖尿病改善のための専門外来。著書に『専門医が教える 肝臓から脂肪を落とす食事術』、『専門医が教える 肝臓から脂肪を落とす7日間実践レシピ』『肝臓から脂肪を落とす お酒と甘いものを一生楽しめる飲み方、食べ方』(いずれもKADOKAWA)などがある。 ----------
肝臓外科医 尾形 哲