「ヘアスタイルを変えろ」石川真佑を覚醒させた女子バレー眞鍋政義監督“驚きの提案”「髪型を変えれば活躍できる…ポニーテールにしろ!」
ブラジル戦で井上をゲームキャプテンに指名
ポニーテールを三つ編みにしたような、見たことのない髪型になっていた。まわりの選手やスタッフはみんな「かわいい」と褒めている。私は心の中で「『キン肉マン』に出てくるラーメンマンみたいやなあ」と思っていたが、もちろん口には出さなかった。 ブラジル戦のスターティングメンバーは、石川真佑(OH)、横田真未(MB)、林琴奈(OH)、井上愛里沙(OH)、山田二千華(MB)、関菜々巳(S)、福留慧美(L)。古賀の代わりに、井上をゲームキャプテンに指名した。 全員で古賀の穴を埋め、この難局を乗り切ろうーーそんな気持ちがチームに横溢している。ロンドンオリンピックの前のような“見えない力”が発動しようとしていた。 試合はいきなり石川のサービスエースでスタートした。序盤はブラジルにリードされたが、中盤以降、落ち着いて得点を重ね、第1セットを25-22で取った。第2セットも25-19と連取。第3セットはブラジルの反撃を受け、17-25で落とした。それでもひるむことなく、石川のサーブ、井上のバックアタックを活かして攻める姿勢を貫いた。 そして迎えた第4セット。マッチポイントでトスはレフトの石川に上がった。ブラジルのブロックは2枚。壁のようにそそり立っている。しかし、石川は落ち着いて相手の動きを見ていた。東京オリンピックの影はもうない。相手の手にうまく当てて、ブロックアウトを取った。25-20。セットカウント3-1。
世界選手権で最強軍団を撃破した意味
サブの選手がコートに駆け込み、歓喜の輪が広がる。観客席では、松葉杖をついた古賀がスタッフとハイタッチを交わしている。ブラジルに勝ったのは、2017年のワールドグランドチャンピオンズカップ以来5年ぶり。世界選手権ではじつに40年ぶりの勝利だった。ずっと勝てなかった最強軍団をついに倒した。しかも、世界選手権という大舞台で。この意味はとてつもなく大きい。 選手個々の数字もよかった。井上はなんと27得点。石川はそれに次ぐ18得点をあげた。さらに、林が16得点、ミドルブロッカーの山田が8得点。アタッカー陣をうまく使い分けた関のトスワークも冴えていた。リベロの内瀬戸と福留も、それぞれサーブレシーブ、ディグで安定したプレーを見せた。チームが一丸となって掴んだ勝利である。 髪型を変えることについて、石川が心の中でどう思っていたのかは分からない。本当に暗示にかかったのかもしれないし、監督から突拍子もない指示を受けて、逆にプレッシャーが抜けたのかもしれない。いずれにせよ、石川はこの試合で覚醒した。東京オリンピックの足枷から解放され、自由に羽ばたき始めた。 <前編から続く>
(「バレーボールPRESS」眞鍋政義 = 文)
【関連記事】
- 【前編から読む】「古賀紗理那は幸せをアピールすればいい」「石川祐希&真佑兄妹にはテレビ出演を」眞鍋政義監督が明かす“女子バレー人気アップ大作戦”
- 【写真】「ヘアスタイルを変えろ」石川真佑の長ーいポニーテールになった試合! 高校時代のショートカットから現在まで一気に見る。パリ五輪出場&ネーションズリーグ銀メダルに輝いた女子バレー日本代表の激闘も(100枚超)
- 【あわせて読みたい】「とにかく真面目。いや真面目すぎる」石川真佑を“プラス思考”に変える女子バレー眞鍋政義監督の試み「負のオーラを払拭してやろう」
- 【こちらも】「キャプテンは古賀、お前しかいない!」眞鍋政義監督が古賀紗理那に主将を託したワケ「俺はお前をリオ五輪で落とした。でも…いっしょにやってくれへんか」
- 【秘話】「マユは相当、気合い入ってた」石川真佑から伝わった“怒り”の感情…不完全燃焼カナダ戦の鬱憤晴らした豪快スパイク〈女子バレー五輪決定秘話〉