ハイエースはフルモデルチェンジせずに継続! 10月に実施される一部改良の中身をキャッチ
2024年10月に法規対応でマイナーチェンジを実施予定
日本の風景にすっかり溶け込んでいるといってもいいクルマが、商用車のトヨタ・ハイエース。ライバルといえるモデルが日産キャラバンしかないということもあるが、自販連(日本自動車販売協会連合会)統計によると、2024年1月から5月までの累計販売台数(小型四輪貨物車として)は2万1539台となっている。一方のキャラバンは6480台となり、ライバルの約3.3倍販売しており、このクラスでは圧倒的な支持を得ているといっていいだろう。 【写真】こうなってるのか! キャンピングカーの作り方とは そのハイエースは1967年にデビューしており、今年でデビューから57年を迎えることになる。「アラ還(もうすぐ還暦)」モデルとなるハイエースであるが、現行モデルは5代目となっている。初代7年、2代目8年、3代目7年(バン)、4代目5年(バン)と、ここまでは各歴代モデルはそれほどモデルレンジが長いともいえないのだが、現行5代目は2004年のデビューとなり、今年で20周年を迎えるかなりのご長寿モデルとなってる。 「そろそろモデルチェンジかなぁ」などと思っていたら、某筋より「現行ハイエースが2024年10月に改良を行う」との情報が舞い込んできた。 改良といっても法規対応を行うものなので、見た目の変更はないとのこと。コミューター(マイクロバス仕様)を除く全車に対する「後面衝突時の燃料漏れ防止等装置(UN-R153)」基準新設対応と、さらにディーゼル全車には「排出ガスRDE試験(Real driving emissions/路上走行時の排出ガス試験)」の新規導入対応が行われる。この改良モデルは10月1日発表・発売を予定しているようである。 なお、PALシステム(タブレット型営業支援システム)への情報反映開始時期(発売前が一般的)は、本稿執筆時点では未定となっているとのことである。
20周年を記念した特別仕様車も追加される
法規対応による改良と同時に商品力強化として、スーパーGLベースとなる特別仕様車「DARK PRIME S(ディーゼル・標準ロングボディ・標準ルーフ車のみ)」の新設定と、「DARK PRIME II」の継続設定も行われる。新設されるDARK PRIME Sの最大の魅力は、搭載エンジンが標準搭載仕様に対し最高出力で5%、最大トルクで10%の出力向上が行われていることだ。 さらに専用装備としては、ダークプラチナサテンメッキのフロントグリルとバックドアガーニッシュ、リヤエンブレムはグレードのほか特別仕様車専用エンブレムを採用、本革巻+カーボン調加飾ステアリングホイール&シフトノブ、カーボン調加飾センタークラスター&シフトベゼルそしてパワーウインドウスイッチベース、シート表皮(専用トリコット+表皮運転席&助手席専用ロゴ付き)となっているとのことである。 また、現行型(200系)誕生20周年を記念した専用装備として、特別仕様車も含むスーパーGLを対象にフロントドアスカッフプレートも新規メーカーオプションとして設定されるようだ。 さらに、モデリスタでは従来設定車型については、エアロパーツ(バージョンI・II)の意匠変更、ラゲージユーティリティフレーム、カーゴフレームアッセンブルの廃止、サンシェードをTRDブランドから変更して設定。スーパーGL(特別仕様車も含む)には、シグネチャーイルミブレード、LEDフロントフォグランプバルブ(イエロー)、ラゲージLEDが新規設定される。 また、TRDでは従来設定車型について、フロントスポイラー(LED付き)、サイドスカート(ステンレススチール)、マッドフラップ、15インチアルミホイール&タイヤセット、15インチアルミホイール&ナットセットについて、TRDからGRパーツへブランドロゴが変更される。フロントフードエクステンション、TRDプロテクションシート、TRDフューエルガーニッシュ、TRDウインカーバルブ、プッシュスタートスイッチ、スポーツシート(運転席用)、ショックアブソーバーセット、15インチアルミホイール「グランヴァードHC1」&ナットセットは設定廃止される。 海外では、日本において「グランエース」の車名で販売されているモデルを、300型ハイエースとして、ミニバン仕様のほかにもパネルバンなどの商用バン仕様もラインアップしている。調べてみると、アジア市場でも日本でポピュラーとなっている4ナンバー仕様の200型バンは、シンガポールやマレーシアなど一部でのみ正規モデルとしてラインアップされ、300型が主流となっている。とはいうものの、いまもなお世界中(新興国中心)で200型バンは「働くクルマ」として愛用されている。 ハイエースが世界で愛される理由はその優れた耐久性にあるようだ。中古車検索サイトで10年落ち、つまり2014年式のハイエースバンを検索すると、ディーゼルDXで走行距離10万km強のもので、いまの新車価格の約63%となる209万円という物件があった。走行距離が15万kmオーバーも珍しくなく、ディーゼルのほうが高めの傾向で、全体でもかなり再販価値の高い状況となっていた。 もちろん、中古車として日本から海外への中古車輸出でも人気が高いことが影響しているのは間違いない。商用車でありながら車両盗難の多いクルマのトップランキングにくることも珍しくないのも、あまり喜べないがそのような事実を物語っているといえよう。 単なる「はたらくクルマ」を超えてしまった存在感を見せるのがハイエース。300系はその大きさからも、そのまま200系の後継となるのは日本では難しいともいわれている。さらに、200系ぐらいのサイズを維持するならば、BEV(バッテリー電気自動車)も検討しなければならないだろう。そのため、このまま今回のような法規対応を繰り返しながら行けるところまで行くのではないかとの話もある。すでに「伝説の名車」の域に入りつつあるハイエースの今後も多いに気になるところである。
前之橋三郎