【解説】トランプ支持者は何者なのか?支持率90%超“トランプタウン”の支持者が求めたものは「変化」 生活費は急騰・ローン地獄・エリート政治家への不信感も
期日前投票所にはトランプ支持が続々・・・
さらに期日前投票所に行ってみると、1日に500人ほどが投票を行い、ほとんどトランプ氏に投票しているという。実際に私たちも2時間ほど滞在して話を聞いたが、全員がトランプ氏に投票したと答えた。また理由については、ほぼ全ての人が「4年前との生活の変化」を理由に挙げた。 選挙の終盤戦、トランプ氏は演説で「4年前よりも今の方が良い状況か?」と冒頭に聞き、聴衆からの「ノー!」との大合唱を聞いてから、話し始めていた。 アメリカ経済はマクロ的には好調とも言われるが、現地で生活する身としては、生活費がとにかく高いのは痛感する。ハリス氏よりも、その実感をトランプ氏はよりすくい上げて聴衆に訴えていた。 さらにもう1つ、トランプ氏を支持する理由として「ビジネスマン」「政治家ではない」「他の政治家と違う」との声も多く聞かれた。日本でも「永田町の常識は世間の非常識」と揶揄する言葉もあるが、政府中央の「エリート政治家」や、首都ワシントンやニューヨークの特権階級層への不信感が増幅されていた。権力闘争や、利権構造にまみれた既存の政治家よりも、ビジネスマンのトランプ氏の方が良いとの意見は、これまでも多く聞かれたことだ。
16歳の少女 「投票権があればトランプ氏に」
最後に訪れた場所は、豚や牛などの家畜や干草や木材を生産する農場だ。 案内してくれたのは、農場の8代目となるコーラ・クルーズさん(16)だ。普段は町の外の学校に午前8時から午後1時半まで通い、その後農場の仕事をしているという。 父親のステファン・クルーズさん(42)は「経費はほぼ倍増。商品は同じ値段のまま」と利益がほとんど出ないと話してくれた コーラさんも「あらゆるものが値上がりしている」と指摘する。さらに、「学校へ毎週通うためにトラックにガソリンを入れると80ドル(約1万2000円)かかる」と教えてくれた。 「家族の土地がなければ、家を建てたり、一から事業を立ち上げたりする余裕はない。将来が約束されているわけではない。変化が必要だ」と彼女も強調する。 彼女の将来の夢は、この農場を継いで、家族を持ち、子どもを育てたいという。今は未成年で投票権がない彼女だが、もし投票できるなら誰を支持するのか聞いてみると、次のように答えた。 「ここ数年の個人的な経験から、トランプ氏を支持するのが最も論理的だ。完璧な人間などいないが、彼が大統領だった4年間は、農業界にはより画期的なことが多くあった」 取材を通じて、トランプ氏を支持する人の中には個性的な人や熱烈な人も多くいる一方で、自分たちの暮らしの改善、既存の政治家への不信感、そして現状からの「変化」を強く求める、普通に暮らしている人達の怒りも多く聞くことができた。 トランプ氏は選挙戦の間に、様々な公約を訴えてきたが、2025年1月20日の大統領就任式を経て、新政権でこうした国民の声に応えることができるのか。その手腕も問われることになりそうだ。 【取材・執筆:FNNワシントン支局 中西孝介】
中西孝介