AIブームの「新世界編」でエヌビディアはまだ稼ぐ 「推論」用途で半導体・計算量の見立てが激変
生成AIブームに乗って成長してきた半導体の巨人・エヌビディア。その業績・株価動向を占ううえでも、「ブームはいつまで続くのか?」は重要なテーマだ。担当記者が業界の最新事情を基に解説する。 ※記事の内容は解説動画「【日本重視で狙う先】エヌビディアが「半導体メーカー」の呼称を嫌がる理由/孫正義×ジェンスン・ファン対談で見えたこと/ハイパースケーラーの需要を左右する要素」からの抜粋です。外部配信先では動画を視聴できない場合があるため、東洋経済オンライン内、または東洋経済オンラインのYouTubeでご覧ください。 【動画を見る】エヌビディアが日本重視で狙う先/「半導体メーカー」の呼称を嫌がる理由/孫正義×ジェンスン・ファン対談で見えたこと/ハイパースケーラーの需要を左右する要素
――今後の生成AIブームの動向、それに連動するエヌビディアの動向をどう見ていますか? 今年の7月末に『週刊東洋経済』で半導体特集を手がけた際には、AI半導体マーケットについては「今後数年安泰だが、その先はわからない」というのが業界のコンセンサスでした。それには、AIの用途が「学習」から「推論」に変わっていくことが関係しています。 「学習」はデータセンターで巨大な電力を使いながら行うものだけど、「推論」はスマホやパソコン、自動車などの端末=エッジで行うパターンが多いとされてきました。
エヌビディアの半導体は大消費電力下での性能に長けていて、データセンターで使うのに最適なもの。なので、用途が「推論」に移っていく過程で、AIマーケットでのシェアをずっと維持することは難しいのではないか、といわれてきました。 ■ここ数カ月で見立てが変わった そんな見立てが、この2、3カ月で一気に変わってきました。 きっかけは、ChatGPTが「o1」という新しいモデルを出したこと。今までのものとスタイルが違って、こちらの問いかけへの答えを返すまでに、必要な推論を何回も何回も行う。そのうえでいちばんよさそうな答えを返す、というスタイルのものです。
できること・できないことはありつつ、前身のモデルと比べても明らかに複雑なことができるようになっているといいます。 「学習」においては、データを突っ込めば突っ込むほど、つまりGPUを使えば使うほど賢くなるという考え方が浸透していて、これを「Scaling Law」(スケーリング則)といいます。それが「o1」の登場で、「推論」にも当てはまることがわかったわけです。 だからこの何カ月間かで「推論」のマーケット、しかも(エッジだけでなく)データセンターの大消費電力下で行うようなもののマーケットが、かなり拡大したよねというのが、今業界を騒がせています。