スーパーフォーミュラは予選が8割。打倒・王者MUGENに向け上々のテストとなったライバル勢……坪井翔「予選でいかに前に出られるかを意識した」
7月7日と8日、猛暑に見舞われた富士スピードウェイでスーパーフォーミュラのインシーズンテストが実施された。2週間後の第4戦富士とそれ以降のレースに向けて勢力図を変えるかもしれない重要なテストと言えたが、タイムシートを見る限りは過去3戦で活躍しているドライバーが順当に好タイムをマークしているような印象であった。 【オンボード動画比較】フォーミュラカー、ムズ過ぎんだろ……! 編集部員が1周30秒弱のコースで伊藤大輔に大敗した【プロvs素人】 第4戦以降の注目ポイントと言えるのが、ここまで強さを見せている王者TEAM MUGENを、ライバル勢がどこまで苦しめることができるのかという点だ。第2戦オートポリスで勝利し、TEAM MUGENの野尻智紀、岩佐歩夢に次ぐランキング3番手につける牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)も充実したテストになったようで、「決して悪い位置にはいない。レースでも今回のような高い気温になるのか、もう少し下がるのかで勢力図も変わるが、どっちに転んでもある程度レベルの高い位置にはいると思う」と確かな自信をのぞかせていた。 開幕戦鈴鹿で2位に入りランキング4番手につけている山下健太(KONDO RACING)も、総合トップとなった今回のテストでかなりの好感触が得られたようで、初日走行後のインタビューで「かなり自信になりましたし、無線で『なんか、クルマ良い感じですね』って初めて言いました。チームからも『珍しいね』って言われました(笑)」と話していた。 暑いコンディションでのレースを課題としていたPONOS NAKAJIMA RACINGの2台も、今回の富士テストで好タイムをマークした。 ランキング5番手の山本尚貴はテスト2日目午後に2番手に入り、2日間の総合タイムでも5番手につけたが、決して順調なテストではなかったとのこと。「最後の最後まで良いもの(セットアップ)が見つかっていなくて、今あるもので突貫でアタックしたら予想に反してタイムが出たので、それが何なのか精査していかないといけません。最後は手応えを得られたので、それをレースウィークのコンディションでも発揮したいですが、スーパーフォーミュラはそこが難しいですね」と述べた。 山本のチームメイトで、2日目午後に3番手タイム(テスト総合6番手)を出した佐藤蓮は、ホームストレートで大きなゲインがあるローダウンフォース仕様のマシンもテストしていたという。ストレートスピードの速さを活かしてバトルで優位に立てる可能性がある一方で、ダウンフォース不足によるレースペース悪化も懸念されるため、レースでどんな仕様を持ち込むか気になるところだが、5位に入った開幕戦と同じくらいの好感触を得られているようだ。 また第2戦、第3戦と3位に入った坪井翔(VANTELIN TEAM TOM’S)も、テスト総合4番手と上々の結果に。「少なくとも常にトップ5にいられるパフォーマンスは感じられている」と語る一方で、チャンピオンを獲るためには3位の積み重ねだけでは不十分であり、優勝する必要があると述べた。そしてそのためには、予選パフォーマンスを向上させる必要があると考えており、実際坪井は今回のテストで「予選でいかに前に出られるかを意識して取り組んできた」という。 実際、スーパーフォーミュラの現行フォーマットは予選で上位グリッドを獲得したドライバーに比較的有利なフォーマットと言える。まず、ポールポジションのドライバーには3ポイントがボーナスとして与えられる上(2番手は2ポイント、3番手は1ポイント)、決勝レースではそもそもコース上での追い抜きが容易ではない点に加えて、レース距離もスプリント寄りでピット戦略の幅もそう広くはないため、長距離レースと比べると逃げ切りやすい。そしてポール・トゥ・ウインで23点を積み上げれば、ライバルを一気に突き離すことができる。 「そもそもフォーミュラカーのレースではある程度予選で前にいる必要があると思いますし、(スーパーフォーミュラは)7~8割くらいは予選で決まっちゃうと思います」と語る坪井。佐藤もそういった傾向を感じているため、「まずはスタートで2列目までにいられるように」と意識しているという。 ここまでの3戦、予選だけで9ポイントを上積みしているTEAM MUGEN。ここをライバルがいかに切り崩していけるかが今後に向けた鍵となってきそうだ。
戎井健一郎
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