【米国株ウォッチ】株主還元に積極的なAIG、トランプ政権でも追い風
世界有数の保険グループであるアメリカン・インターナショナル・グループの株価(ティッカーシンボル:AIG)は過去12カ月で約7%上昇した。比較として、S&P500は同期間で25%以上の上昇、AIGの同業であるトラベラーズは同25%の上昇となっている。 では、最近のAIGの株価に影響を与えている要因は何だろうか? AIGの財務業績はそれなりに好調だ。AIGは2024年第3四半期決算で市場予想を上回る利益を計上し、調整後のEPS(1株あたりの純利益)は前年同期比18%増の1.23ドルだった。グローバル・コマーシャル・ラインが業績を牽引し、正味保険料は比較可能ベースで前年同期比6%増となった。グローバル・コマーシャル・ラインにはグローバル市場における損害保険、傷害保険、特殊保険が含まれ、同部門は11億ドル(約1700億円)の新規契約を追加し、契約の継続率は約88%と好調だった。株式市場の好調も追い風となり、投資収益も増加している。AIGの正味投資利益は前年同期比14%増の9億7300万ドル(約1538億円)であった。 AIGは過去4年間におけるすべての年でプラスのリターンを記録した数少ない銘柄のひとつだが、それでも一貫して市場全体に勝つには十分ではなかった。AIGの年間リターンは、2021年に54%、2022年に14%、2023年に10%、2024年に10%だった。 AIGは生命保険と退職年金保険事業をスピンオフした後、損害保険事業への注力を強めている。保険料が数十年にわたって固定される生命保険とは異なり、これらの分野は時間軸がより短く、保険会社はさまざまなリスクを考慮して保険料をより柔軟に調整できる。また、損害保険は、需要が高まっている利益率の高いニッチな分野に対応している。 AIGを後押しするトレンドは他にもある。最近、ドナルド・トランプが米国大統領に選出されたことで規制負担の軽減や減税の可能性があり、それによって収益性が改善するという恩恵を保険各社にもたらす可能性がある。AIGの株主還元プログラムも依然として魅力的で、第3四半期には普通株を約15億ドル(約2400億円)買い戻し、2024年1~9月における株主還元額は合計で60億ドル(約9500億円)に達している。これにより発行済み株式数が減り、EPSが押し上げられる可能性もあるだろう。 以上を踏まえ、私たちはAIGの目標株価を、現在の市場価格より約24%高い、約90ドルとしている。
Trefis Team