オードリー・タンは生活にも「/」を入れる...「スラッシュワーカー」になる方法、超える方法
オードリーはスラッシュ族なのか
オードリーはいかにも「スラッシュ族」に見えるが、実際には「単槓(ダンガン)」(中国語では体操競技の鉄棒の意)、つまり一つのテーマを徹底的に追及するタイプだ。 14歳から今に至るまで、テーマを変えることなく研究を続けている。名刺に肩書きではなく研究テーマだけを書くなら、そこにスラッシュは入らない。 オードリーが参加する七つのNGOは、オランダ・ニューヨーク・スペインなどを拠点としているため、それぞれの土地に社会的なネットワークを持っている。七つのNGOが理事会を開くのは多くて四半期に一度、あるいは半年に一度くらいだ。オードリーにとっては、時間的な負担は少ない割に大きなメリットがある。 NGOごとに異なる人脈ができ、互いに力を貸し合ったり、知識を共有したりできることだ。「パンデミック後の世界はどう変わるか」といったテーマや、長年研究してきたテーマについて討論すれば、七つの異なる視点からの意見を聞ける。今までとは違う視界が開け、新たな世界に触れることができるのだ。 もはや「スラッシュ族」はごく一般的な働き方になっているが、数年も経てば、職業や肩書きではなく、探求するテーマそのものがアイデンティティになる時代が来ると考えられる。 かつての「一つの会社に勤め上げる」という考えはもはや消えつつあるし、退職金も期待できない。そんな時代だからこそ、会社から与えられた肩書きではなく「自分が何に興味を持ち、何を専門にしているか」によって評価されたいと考える人が増える。 専門分野を追求する人、すなわち「単槓」こそが特別な存在として尊重されるようになるだろう。 一つの分野に専念し、徹底的に掘り下げていける人は決して多くない。数が少なければ、それだけ重視されるはずだ。
本業以外に20パーセントの時間を使う
では、「スラッシュ族」としての能力を磨くにはどうすればいいのか。まずは、とにかく好奇心を持ち続けることだ。好奇心の向く方向と、実際に何を学び、どんな技能を習得するかは直接の関係があるわけではない。何か一つのことに興味を持ったら、その背後には無数の技能と学問が存在する。 好奇心とは、ただ単に疑問の答えを見つけることではない。大事なのは好奇心を失わず、探求し続けることだ。 今の時代は程度の差はあれ、誰もが「スラッシュ族」の一面を持っている。これはテクノロジーの恩恵によるところが大きい。かつてはチャンスや人脈を手に入れるために今の仕事や家庭を犠牲にせざるを得なかったが、現在では多くの人がネット上でチャンスや人脈をつかんでいる。これも「スラッシュ族」が増え続ける一因だ。 オードリーは「職業だけでなく生活にもスラッシュを入れよう」と提案する。今、あなたが専業で働いているとしたら、自分のために20パーセントの時間を確保し、本業以外のコミュニティにその時間を使う。そうすることで少しずつ新たな人脈や専門知識を手に入れることができる。 決して複数の収入源を持つべきだという意味ではない。本業以外に自分を見つめ直したり、興味のあることを楽しんだりする時間を作ろうという話だ。