目薬は一度に2滴さしても意味がない!【40代、50代・薬と上手に付き合う方法⑧】
目薬はデリケート! 先端を触るとあっという間に雑菌が増殖する
目薬をさすのが上手な人と下手な人がいる。中には片手で目尻からさっとさす人も見かける。 「実はそのさし方は間違っていて、とても危険です。 眼球の表面は体の中で最もデリケートな粘膜です。目薬はそこに使用するので、菌やウイルスなどの微生物がつかないように無菌状態で作られ、保存料も最小限です。 目尻からさす場合、目薬の先端を目の際の皮膚につけて流し込んでいるはず。するとそこから目薬の中に雑菌などが混入する可能性が高いのです」 実は約9割の人が目薬のさし方や扱い方を間違っているそう。 「目薬は液体なので、開封後も扱い方には細心の注意が必要です。まず、目薬を使用する前には手洗いをしっかりして、先端には触らないように注意してください。 キャップの内側は目薬の先端と接触する場所なので、そこも触らないこと。目薬を使用時のキャップは内側面を上にして机などに置きます。また、点眼方法もいくつか守ってほしいポイントがあります」
正しい点眼方法とは?
◆ポイント1 目に入れる目薬は1滴! 目薬は1滴で効果が出るように設計されている。2滴、3滴と入れたら、もっと効果が出るような気がするが、まぶたの中には1滴分しかためられない。そのため、多くさしても顔にあふれて無駄になるだけだ。処方薬であれば、次回の通院の前に薬が足りなくなるかもしれない。
◆ポイント2 点眼後に軽く目頭を1分間押さえる 目頭には鼻に抜ける穴があり、せっかく入れた目薬がそこへ流れてしまう可能性がある。それを防ぐために、点眼後は目頭を指先で軽く触れる程度に、最低でも1分ほど押さる。
◆ポイント3 点眼後はまぶたをパチパチしない 点眼後、目薬が目の中に行き届くようにと、パチパチとまぶたを開けたり閉じたり、もしくは眼球を動かす人がいるが、これも逆効果。目頭の穴から薬が逃げやすくなるだけだ。点眼後はまぶたを閉じて1~2分静かにしていよう。 ◆ポイント4 点眼後にすぐにティッシュで目尻を拭わない 点眼後に目を閉じてあふれてくる薬をティッシュで拭くのはいいのだが、すぐに目尻に当ててしまうと、目薬がほとんどティッシュに吸い取られてしまう可能性がある。 ◆ポイント5 目のふちにあふれた目薬を流し込まない 目からそれて、目のふちやまつ毛に落ちた目薬は、すでに細菌などが付着している可能性がある。それを目に入れるのはNG。新たに1滴さし直すのが正解だ。 ◆ポイント6 目薬が2本以上あるときは、透明なものから! 目薬を複数使用している場合、使用する順番がある。目薬をよく見ると、透明なものと濁っているものがある。透明なのは薬の粒子が小さいので吸収が早く、濁っているものは粒子が大きいので吸収が遅いという特徴がある。それを考慮すると、透明なものから使用したほうが効率的だ。1本目と2本目は5~10分、間隔をあけて使用するのが基本だ。 「このように目薬はとてもデリケートです。明記されている使用期限は未開封のときのものなので、開封したら約1カ月で使い切るようにしましょう。半年や1年も過ぎたものは、残念ですが廃棄してください」
【教えてくれたのは】 鈴木素邦さん 薬剤師。経営学修士(MBA)。「クラヤコンサルティング」代表取締役。城西大学薬学部非常勤講師。東京大学や慶応義塾大学などの教壇に立ち、多くの薬剤師を世に送り出す。薬局薬剤師の経験、多くの薬剤師を輩出した経験をもとに、お客様第一の薬局になれるような薬局向け経営コンサルティングを行う。研修講師としても、薬局経営者向け中心に講座を実施している。著書に『薬の裏側』(総合法令出版)など。 イラスト/いいあい 取材・原文/山村浩子