【Cycle*2024 ツアー・ダウンアンダー:レビュー】たくさんの「初物」でにぎわった激闘はスティーブン・ウィリアムズ総合優勝
タイムを6秒落としたデルトロに代わって、ウィランガのてっぺんでは、ウィリアムズが赤土色のリーダージャージを肩に羽織った。ただ総合タイム差ゼロの2位オンリーとも、5秒遅れの3位ナルバエスとも、フィニッシュタイム自体の累計は1秒たりとも変わらない。違いは単に「区間着順累計」と「ボーナスタイム」だけ。ちなみにデルトロだって、4位5秒遅れでピタリとつけていた。いくら僅差で総合が決するダウンアンダーとは言え、決戦日の朝に5秒差で4人がひしめくのは、2003年以来の接戦だった。
「大会史上最もタフな週末」の終わりは、幸いにも、ややこしい計算などもはや必要なかった。単純に総合首位が、最終日に、区間を制したのだから。
ナルバエスとイネオスの仲間たちは、積極的にレース制御に努めた。フィリッポ・ガンナとジョシュア・ターリングという、現役屈指の強脚ルーラーが隊列を勇ましく引いた。大会最後の難所、マウント・ロフティの山道では、最後にもう一度、デルトロが若さあふれる攻撃精神を発揮した。残り1.5kmから2度、3度、猛烈に加速を切った。オンリーはたまらず後方へ蹴落とされた。しかしウィリアムズは、ライバルたちの猛攻にも、まるで揺るがなかった。
締めくくりは、少し長めのスプリント。ダウンアンダークラシックから全開で暴れまわってきたナルバエスとデルトロをあっさりと突き放すと、ここまでライバルたちの派手な活躍の影に潜んできたウィリアムズは、悠々と両手を広げた。これ以上望めないほどの、最高のエンディングだった。
ダウンアンダーは9大会ぶりに「北半球出身」チャンピオンを迎え入れた。しかも英国人が、オーストラリアの王となるのは、1999年のレース設立以来初めて。またウィリアムズと同タイムでフィニッシュラインに滑り込んだナルバエスとデルトロが、それぞれ総合では2位と3位の座に収まった。ナルバエスの総合9秒差は、純粋にボーナスタイムの差。6日間でウィリアムズが20秒集めたのに対して、ナルバエスは11秒にとどまった。 ウィリアムズにとっては人生3度目のステージレース総合優勝。1度目はカテゴリー1のCROレースで、昨季はプロシリーズのアークティック・レース・ノルウェーで勝った。もちろん3度目の今回は、レベルをさらに一段上げ、最高カテゴリーでの戴冠だった。
【関連記事】
- 【シクロクロス2023/24 WC第13戦 ベニドルム:プレビュー】ビッグ・スリー対決の見納め、起伏が少なく長い直線はすさまじいスピードレースを演出する
- 【Cycle*2024 ツアー・ダウンアンダー:プレビュー】アラフィリップが10年ぶりにオーストラリアでシーズン開幕!大会史上、最もタフな週末
- 日本に住んでいるならサイクルロードレースを絶対見るべきだ?! その2つの理由(時差&デバイス)
- 【2024展望 | サイクルロードレース】新しい年は、新しい物語の始まり。熱狂必至の新シーズンが幕を開ける!
- 【シクロクロス2023/24 WC第12戦 ゾンホーフェン:プレビュー】世界屈指の難関コース、立ちはだかる砂山と砂の窪地のダウンヒル