「キャンプブームの終焉」だけじゃない、スノーピーク「純利益99%減」の背景とは。在庫が余りすぎて安全性は「危険水域」へ
有価証券報告書から販管費の内訳を調べると、特に「給料手当」の割合が大きく、2021年が24.5%に対し、2023年は27.0%とさらに増加。従業員数から1人当たり給与を単純計算すると、2021年が406万円に対し、2023年は506万円と100万円上昇していることから、給与のベースアップが利益を圧迫したと分析できます。 また、当期は前期同様、既存店及び海外現地法人の収益性を見直したことで、4億円の減損が発生。最終利益は前期比99.9%減の100万円と、赤字転落の一歩手前まで減少しました。
■在庫があまりすぎた 体つきはどうでしょうか。総資産は前期から40億円(13.0%)増加。うち、流動資産が前期から31億円(18.6%)増えています。 なかでも「棚卸資産」(在庫)が、前期から59.9%と大幅に増加。棚卸資産回転期間(在庫などの棚卸資産が売上に変わるまでの期間)を計算すると、171日から362日と倍以上になっており、在庫がだぶついています。エネルギーになる前の脂肪が、かなり蓄えられている状態です。
これに伴い、前期から運転資金(事業を継続するために必要になるお金)は85億円から117億円に約37%増加、CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル。事業活動を行ううえで支払った現金が、在庫や売掛金などに形を変えて、再び現金として戻ってくるまでに要する日数)は170日から350日に増えており、資金繰りが苦しくなっています。 ■安全性は「危険水域」へ 負債の部をみると、増加した運転資金を確保するために、短期借入金が前期53億円から当期104億円に倍増しています。
これにより、短期的な安全性を示す流動比率(流動負債に対する流動資産の割合。比較的短期の資金繰りの安全性を表す)は、182%から143%に低下。 また、短期的な返済能力を厳密に示す当座比率(流動負債に対する当座資産<現預金、受取手形、売掛金、有価証券の合計>の割合)も98%から63%に低下しています。 大企業の平均は80%台であり、危険水域に向かって急低下しています。 さらに、自己資本比率は、48.8%から44.6%に4.2ポイント低下。骨格はまだ十分な太さがありつつも急激に細くなっており、今後さらに比率が低下しないか注視が必要です。
《『決算書「分析」超入門2025』では、スノーピークのキャッシュ・フロー計算書、株価の変動についても詳しく分析しています》
佐伯 良隆 :グロービス経営大学院教授(ファイナンス)