七里圭監督が村上春樹ライブラリーで撮り上げた「ピアニストを待ちながら」、予告編と識者コメント公開
真夜中の図書館で目を覚ました瞬介は、なぜか外に出られぬまま、学生時代に演劇仲間だった行人、貴織と再会。いつまでも明けない夜の中、3人はかつて上演できなかった芝居『ピアニストを待ちながら』の稽古を始める──。「のんきな姉さん」「眠り姫」の異才・七里圭監督が、世界的建築家・隈研吾が手掛けた村上春樹ライブラリー(早稲田大学国際文学館)の開館記念として、同館で全編撮り上げた「ピアニストを待ちながら」。2022年10月に45分の短編として初披露されたが、このたび61分の劇場公開版に生まれ変わり、10月12日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国で順次公開される。ポスタービジュアル、予告編、識者のコメントが到着した。 「ピアニストを待ちながら」予告編
瞬介役を「東京ソナタ」「ミュジコフィリア」の井之脇海、貴織役を「わたし達はおとな」「熱のあとに」の木竜麻生、行人役を「カゾクデッサン」「劇場版 美しい波 ~eternal」の大友一生、謎めいたシングルマザーの絵美役を「王国(あるいはその家について)」「ナミビアの砂漠」の澁谷麻美、中年男の出目役を青山真治監督作の常連だった斉藤陽一郎が務める。
〈コメント〉
図書館という空間が演劇によって異化されるのを、この映画を見る者は目の当たりする。そこで演劇のリハーサルが繰り広げられること。しかも真夜中に。それによってそこに結界が生じる。そこがまぎれもなく異界になる。劇場でない空間が演劇によってまざまざと異化されるさまが、そのような演劇の上演そのものに立ち会う以上にそれを捉えた映画、つまり、この「ピアニストを待ちながら」という映画を見ることによって、よりまざまざと味わうことができるように思われるのは、しかし、なぜなのだろう? ──岡田利規(チェルフィッチュ主宰/演劇作家/小説家) 死の舞踏のフィニッシュが永遠に先送りされる。七里圭は現代映画をバロック化させた。ノイズと風景の反復によって、かつてはここに誰かがいたはずなのにとブツブツ唱えながら「誰(た)が袖」を素描し続ける。「誰が袖」とはエンプティショットであり、七里映画にあっては、誰かが写っているショットも、本質的にはエンプティショットなのだ。エンプティショットがリフレインされ、延滞され、フットマークが貼り直される。 ──荻野洋一(映画評論家、番組等構成演出) 「ピアニストを待ちながら」は、現今の社会を意識した実験的な作品であると同時に、遥か昔から問い続けられてきた「存在」の問題に、ある視座をもって応答する作品だと感じた。しかし、観客の目に映るのはユーモアに溢れたシーンの数々であるために、肩の力を抜いて鑑賞するのが得策です。笑ける余白のある時間を過ごしたい方におすすめです! ──関田育子(ユニット[関田育子]代表/脚本家/演出家) なお、村上春樹ライブラリーでは10月8日(火)に七里監督とアメリカ文学研究者・翻訳家の柴田元幸による“映画と文学の物語”をめぐる対談イベントを開催。イメージフォーラムでは9月28日(土)より七里監督作「のんきな姉さん」「眠り姫」を再上映する。
「ピアニストを待ちながら」
出演:井之脇海、木竜麻生、大友一生、澁谷麻美、斉藤陽一郎 監督・脚本:七里圭 プロデューサー:熊野雅恵 撮影:渡邉寿岳 照明:高橋哲也 録音:松野泉、黄永昌 音楽:宇波拓 編集:宮島竜治、山田佑介 制作・配給:合同会社インディペンデントフィルム 2024年/日本/カラー/61分/ヨーロピアンビスタ/5.1ch /DCP ©合同会社インディペンデントフィルム/早稲田大学国際文学館 公式サイト:https://keishichiri.com/pianist