帝国ホテルのバー、おすすめの1杯 100年受け継いだ感動のレシピ
連載《hotel TIPS》Vol.6
編集長がホテルのおいしいものや楽しみを探しに行く「hotel TIPS」。帝国ホテル東京(東京・千代田)のメインバー「オールドインペリアルバー」には、100年受け継がれてきた秘伝のカクテルがあるそうです。誕生したのは米国の建築家、フランク・ロイド・ライト氏の設計による旧本館(ライト館)が開業した翌年のこと。長きにわたり国内外の顧客を魅了し続けてきた老舗の1杯は、どんなストーリーを秘めているのでしょうか。 【1分動画・写真はこちら】1杯のカクテル、期待感を高める演出とは バーテンダーは何を語る?
■日本の風景、グラスに再現
チーフバーテンダーの石橋泰輝さんが軽やかな手つきでシェークし、グラスに注いでくれたのが、帝国ホテルを代表するオリジナルカクテル「マウント フジ」です。乳白色の液体にふわりとクレマ(泡)が立ち、縁には赤いマラスキーノチェリー(砂糖漬けのさくらんぼ)が飾られます。香りは甘やかで、口当たりはクリーミー。フルーティーで様々な風味がブレンドされたような中甘口の味わいです。もっともベースにはジンがしっかりと効いていて、素顔はドライなカクテル。1杯でほろ酔いになります。 マウント フジが初めて提供されたのは1924年(大正13年)ですから、今年は生誕100周年に当たります。帝国ホテルが生んだオリジナルカクテルの第1号です。「当時、客船で世界一周旅行をしていた外国人の団体客をお迎えするために考案されました」と石橋さん。より日本らしいカクテルを、ということで当時のスタッフが着想したのが日本を代表する霊峰、富士山のモチーフでした。「初雪に白く覆われた富士山のイメージで、チェリーは日の出を表現しています」。なるほど、一幅の風景画のエッセンスがグラスの中に投影されているようですね。 マウント フジは、適温に冷やし、短い時間で飲みきるように作られたショートカクテルです。多くのショートカクテルは3~4種類の材料で作られますが、マウント フジはジン、マラスキーノリキュール、レモンジュース、パイナップルジュース、クリーム、卵白、シュガーシロップと多くの材料が使われているのが特徴です。これが複雑で、奥行きのある味わいの秘密なのです。世界を旅する欧米のVIPも、このオリジナリティーあふれる1杯を大いに堪能したはずです。