帝国ホテルのバー、おすすめの1杯 100年受け継いだ感動のレシピ
■感動の歴史、分かち合う1杯
1つ、不思議なことがあります。帝国ホテルのオリジナルカクテルは、いずれもレシピとともに考案者の名前が記されてきました。「ところがこのマウント フジだけは、考案した人が不明なんです。レシピだけが受け継がれてきました」 オールドインペリアルバーは今も海外からのお客様を多く迎えています。「何が良いですか?」と聞かれたとき、石橋さんは、なにはともあれマウント フジをおすすめします。100年前の誕生秘話や、脈々と受け継がれてきたレシピを説明すると、お客様たちは感動の声をあげるそうです。「そんなとき、私自身も、歴史あるホテルで働いているんだということを実感します」 壁面の大谷石のレリーフやテラコッタ。椅子の背もたれや照明の幾何学模様。ライト館の面影を今に伝えるオールドインペリアルバーでは、1920年代の美しい意匠や調度品に囲まれ、古き良き時代の緩やかな時の流れを味わえます。その傍らに、楚々(そそ)とした名物カクテルが寄り添っているならば、それは極上のぜいたくと言えるでしょう。 文:THE NIKKEI MAGAZINE 編集長 松本和佳 ※この記事は「THE NIKKEI MAGAZINE」の記事を再構成して配信しています。