2世選手の宿命を背負う「レブロンの息子」ブロニー・ジェームズ、プロ1年目の奮闘
【2世選手の重圧とメリット】 今のブロニーには圧倒的に経験が不足しており、いわゆるアスリート系の選手としてはエナジーレベルが高くないのも気になるところ。NBAでは合計7戦に出場したが、目立った成績を残せておらず、まずはGリーグでまとまったプレータイムを得るのが、歩むべきベストな道のりだろう。ここで前向きに捉えられるのは、父親同様の成熟した姿勢を持っているブロニーは、自分の立ち位置をしっかりと認識しているように思えることだ。ウィンターショーケースの最中にも、自身の言葉でそう明言していた。 「まずはこのGリーグで経験を積みたい。現状では(NBAでは)多くのプレー機会を得られないのはわかっている。だからここで向上することが大事なんだ」 近年のNBAでは著名選手を父に持つ2世プレーヤーが数多く、そのなかに含まれるのはステフィン・カリー(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)、ドマンタス・サボニス(サクラメント・キングス)のようなスーパースターの息子ばかりではない。ティム・ハーダウェイJr.(2013年ドラフト1巡目全体24位指名)、ゲイリー・ペイトン3世(2016年ドラフト外入団)、スコッティ・ピッペンJr(2022年ドラフト外入団)などは、かつてのスター選手を父に持ちながら、NBA入り当初の評価は必ずしも高くなかった。それでも彼らがNBAで生き残り、このリーグに定着できた理由は縁故主義(Nepotism)の恩恵だけではなかったはずだ。 「2世選手たちは必然的にNBAのライフスタイルを知り尽くしており、おかげで道を外れることは少ない。環境面の迅速な適応が望める」。そういった関係者の証言どおり、若くして突然大金を手にすることへの慣れなどが必要ない2世選手たちは、"Safe Pick(安全な選択肢)"の面があるのかもしれない。 もちろんまだまだ課題は多いが、前述のとおり、ブロニーがNBAでサバイバルを続けても、特に驚かない。サイズ不足ゆえ(188cm)にPGとして起用されることが濃厚で、より高いレベルのボールハンドリングを身につけるのには数シーズンを要するかもしれない。それでもレイカーズ傘下にいる限りは優先的にプレー機会を得るはずで、徐々にエナジーを発揮できるようになるだろう。スターの器ではなくても、正しいプレーの方法を知った献身的なディフェンダー&コンボガードとして、数年後にはNBAへの定着も可能ではないか。 現時点でのドラフト指名と親子出場の"セレモニー"は、縁故採用の側面が強かったとように見える。ただ、ここから先は自身のための戦いになる。常に大きな注目を浴びてのプレーは容易ではないが、そんな重圧のなかでもGリーグから這い上がることができれば、ブロニーは周囲からあらためてリスペクトを勝ち得ることもできるはずである。
杉浦大介●取材・文 text by Sugiura Daisuke