丸亀製麵はなぜ“うどん業界”でぶっちぎりの1位に? とある工夫でV字回復した知られざるグループ店の躍動
グループ店が多くなりすぎるデメリットは…
さらにグループ店は麺類だけでなく、コッペパン専門店「焼きたてコッペ製パン」も経営。小麦粉のプロ、丸亀製麺のグループだからこそ実現したモチモチのパンがウリで、東京・綾瀬店では一日に1600個もの売上を記録している。 惣菜系やスイーツ系など幅広い味を取り揃えることで、朝、ランチ、おやつ、夕食とそれぞれの時間帯に対応して、一日中客がやってくるそうだ。 ほかにもトリドールは、外食産業で世界トップ10入りを目指すべく、海外の人気飲食店のM&Aで勢力とラインナップを増やしている。 人気店の数々が、実は丸亀製麺と同じグループだったと知らなかった人も多かったようで、番組を見た視聴者からは〈ずんどう屋って丸亀製麺系列だったの!?〉〈長田本庄軒って丸亀系列なんだ? ずっと行きたいんだけどいつも混んでて食べれたことないんだよね〉〈綾瀬のコッペパンのお店丸亀系列だったんだぁ知らなかったぁ〉といった驚きの声がSNS上であがっていた。 ところで、番組では系列店を出店することのメリットだけを取り上げていたが、デメリットやリスクの面はどうなっているのだろうか。 大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を持つなど、中小企業コンサルタントの不破聡氏に話を聞いた。 「多ブランド化のデメリットは、経営効率が落ちることです。うどん、ラーメンなどの業態が増えることで、仕入れる食材が変わります。大量一括仕入れの方が価格は安くなりますが、それができなくなると食材費は高くなりがちです。 さらに、それぞれのブランドで広告、集客施策が必要なため、広告宣伝費もかかります。業態に合わせた人材育成も必要ですので、人材育成費用もかかりますね」(不破氏、以下同)
店ごとに麵職人が在中!
確かに丸亀製麵は、超大手チェーン店でありながら、すべての店に麺職人が在中(職人が不在の日、時間帯もある)するなど、人材育成にお金をかけている。 技術力向上と教育システムの一環として2016年より、この麵職人制度を取り入れた。評価基準は厳しく、2024年3月時点で麺職人は全国に1632人いるが、その中で「二つ星」を持つ職人は6人。それ以上の「三つ星」「四つ星」はまだ一人もいない。 丸亀製麵以外の店でさらなる発展を遂げているトリドールだが、麺職人制度に代表されるように、丸亀製麺にももちろん力を入れている。その一つが、“ライブ感”だ。 丸亀製麺ではもともとオープンキッチンを採用し、職人が目の前で調理することをウリにしていたが、さらなるライブ感を目指し、“没入型”の店舗を増やしている。 その店舗では、店内の見えるところに小麦粉の袋がむき出しで積み上げられ、うどん生地を熟成させている熟成室もガラス張りで見物できる。 さらに客と厨房との間のボードも取り払い、究極の臨場感を与えている。捨ててしまう麺の切れ端を客に渡し、できたての麺のモチモチ感を味わってもらう工夫もするなど、まるで工場見学のようだ。 こうしたリニューアルをすることで、店舗によっては売上が20%もアップしたという。 番組でも説明されていた通り、店舗数・売上ともに業界ぶっちぎりのナンバーワンを誇る丸亀製麺。数あるほかのうどんチェーン店との違いはなんなのだろうか。 「丸亀製麵は店舗ごとに粉から麺を作るなど、うどんへのこだわりは業界でも特に強かったのですが、それを認識している消費者は少なかった。そんなとき、マーケティング会社の『刀』と契約し、そうしたこだわりを消費者に認知させて、V字回復していったのです。 つまり、丸亀製麺がもともと持っていたポテンシャルをマーケティングの力で消費者に伝えることができ、これほどの成長をすることができたのではないでしょうか」 テレビ放送の後日、丸亀製麵を通りがかると店の前までの大行列ができていた。今回、こだわりがテレビを通して伝わったことで、ますます客入りが多くなっていきそうだ。 取材・文・撮影/集英社オンライン編集部
集英社オンライン編集部