超攻撃的柔道で女子最重量級初出場初Vの19歳素根輝が五輪金メダル空白を埋める?!
超攻撃的な柔道が持ち味だが、今大会では、さらなるペースアップ、展開の早い柔道をテーマにした。巨漢の海外選手に対して、小さな素根が対抗する手段は、そこなのだ。さらに「相手に指導を先に取られるという課題があった」。今大会では、「自分が先に攻めてぺースをつかんで試合を進めていく」ことを目標に掲げ、それをやりぬいた。「そこはできたかなあと思います」との手ごたえがある。 増地監督は、素根の積極性を高く評価、進化を認めた。 「昨年、世界選手権の個人に出られなかった悔しさが結果につながったのかな。技のキレを見ると決して絶好調ではなかった。その中でも勝負に徹する戦いをやってくれた。オルティスは、投げることのできない相手。しかも、戦術、戦略にたけている選手だが、そういったところに合わせず、積極的に仕掛けることを最初から最後までやった。相手が組み手で誘ってきたが、同じ失敗を繰り返さなかった。大きい外国人に対しても自分の体の不利を弱点にせず、しっかりと戦える。成長しているなと感じた」 そして意地の銅メダルを確保した朝比奈との注目の代表争いについては、2回戦で痛めた右足首の影響に配慮しながらも「優勝が素根。3位が朝比奈。その順位通りに素根が一歩リードした」と、ハッキリ断言した。 父も兄弟も経験者の柔道一家。福岡県久留米市の自宅には、倉庫を改造したトレーニングルームがあり、5歳年上の兄の勝さんが練習パートナーとなって支えてくれている。 だから素根は「ここが終わりじゃない」と力を込めた。 「自分はたくさんの方に支えられて協力してもらってここまできた。一番の恩返しは、五輪での金メダルだと思います。今日、見てくれた家族、知り合いに金メダルを取る姿を見せたい。これからの大会をひとつひとつ勝って最終的に東京五輪で金メダルを取ります」 バルセロナ五輪金メダリストの“平成の三四郎”古賀稔彦が総監督を務める環太平洋大学の1年生。東京五輪での金メダル獲得へ足りないものがあることも理解している。 「今回も課題がたくさん見つかった。足りないところだらけ。技、スタミナ、パワー、スピード。しっかりとやってきたい」 増地監督も「攻める姿勢、技を出すことはいいが、投げ切る、技で1本とる、という課題がある」と指摘する。 号泣した朝比奈も「最後まで自分を信じる力をつけたい。次に生かすための涙です」と逆襲を誓った。 2004年のアテネ五輪で塚田真希が獲得して以来、金メダルのない階級の空白を埋めるべく飛び出してきたスーパーホープは、まだ未完成ではある。再び武道館の畳に立つまでまだまだ物語は続くだろう。だが、その可能性は無限だ。 ちなみに彼女の名前は「輝」と書いて「あきら」と読む。「世界で輝く人に」という願いをこめて両親が命名されたという。