ペイパルのステーブルコイン、時価総額1400億円を突破──ソラナ上での普及加速
決済大手ペイパル(PayPal)のステーブルコイン「PYUSD」が先週、時価総額10億ドルの大台を突破したことがCoinMarketCapのデータで明らかになった。 フィンテック企業パクソス(Paxos)と共同で発行されたPYUSDは、6月以来供給高が2倍以上に増加し、このマイルストーンを達成した。 夏の低迷で暗号資産(仮想通貨)市場全体が冷え込んだにもかかわらず、PYUSDはユーザーのアクティビティも急増した。ビザ(Visa)とAlluviumによるステーブルコインダッシュボードを見ると、月間アクティブウォレットアドレス数は5月の9400から7月には2万5000を超えた。 ペイパルのステーブルコインへの参入は昨年、暗号資産業界全体にとって「分岐点」となるとして注目された。関係者はPYUSDが、最終的に有力ステーブルコインであるサークル(Circle)のUSDコイン(USDC)やテザー(Tether)社のUSDTと競合すると考えたからだ。
ソラナへの拡大が契機に
しかし、PYUSDの成長がイーサリアム上では頓挫したため、初期の熱狂は冷めた。その後、PYUSDは5月末にソラナへと拡大した。 ソラナでの供給高は3カ月でゼロから6億5000万ドルになり、すでにイーサリアムでの供給高を超えている。DefiLlamaのデータによると、過去1カ月の間にソラナ上のPYUSD供給高は171%増加し、ソラナ上でのUSDTの供給高に急速に迫っている。 PYUSDの最近の成長には「インセンティブが大きな役割を果たしている」と、デジタル資産投資商品会社21.coのビジネス開発・戦略アソシエイト、トム・ワン氏は言う。分散型金融(DeFi)プロトコルとの統合も助けになったと、同氏は付け加えた。 ソラナベースのプロトコルであるKamino、Drift、MarginfiはいずれもPYUSDの預金に対する報酬を増額し、トークン保有者に年率2桁の利回りを提供している。直近では、暗号資産カストディ会社のアンカレッジ・デジタル(Anchorage Digital)も先週、機関投資家向けにPYUSD預金に対する報酬を導入した。 しかし、インセンティブが段階的に廃止された場合、PYUSDの成長はどの程度持続可能なのかという懸念が残る。 リサーチ会社アナグラム(Anagram)のパートナー、デビッド・シャトルワース(David Shuttleworth)氏は、「私の印象では、これらのインセンティブは持続可能ではないが、そもそも永続的なものとして設計されていない。より多くのPYUSDを流通させ、ユーザー、特に新しいユーザーをオンチェーンに引き込んで、ソラナエコシステム上で活動させることを目指したものだろう」と語った。 |翻訳・編集:山口晶子|画像:Shutterstock|原文:PayPal's Stablecoin Hits $1B Market Cap as Incentives Boost Activity on Solana
CoinDesk Japan 編集部