福士蒼汰×松本まりかの役者の業「一瞬の快感を味わいたくて、お芝居を続けている」
リズムよくシャッターを切る音が重なる。レンズに捉えられた2人はぞくりとするほど色っぽい。独特の緊張感に包まれた中、不意にその空気が緩む瞬間があった。 【全ての写真】福士蒼汰×松本まりかの撮り下ろしカット(全11枚) それが、セットチェンジのとき。カメラマンから「座ってください」と指示が飛ぶと、スタッフが椅子を用意する前に、福士蒼汰がわざと空気椅子のポーズをする。そのおどけた仕草に、松本まりかも思わず笑い声をあげた。飾らない、素顔の2人がそこにいた。 5月17日(金) 公開の映画『湖の女たち』でW主演を務める福士蒼汰と松本まりか。2人が演じるのは、歪んだ支配欲を抱く若手刑事・圭介と、圭介の冷たい視線に恍惚を覚える介護士の佳代。目の前でにこやかに笑っている2人と同一人物が演じているとは思えない。パブリックイメージを覆す、倒錯した関係性に観客は衝撃を覚えるだろう。 役者として新境地を切り開いた2人に、圭介と佳代として生きた日々を振り返ってもらった。
チャレンジングな作品なので周りの方々が気を遣ってくださいました
――普段仮面をかぶって隠している人間の欲がさらけ出されたような描写が数多くありました。この役を引き受けるのには覚悟が必要だったと思うのですが、やってみようと思った一番の決め手は何だったのでしょうか。 福士 いつかこういった作品にも挑戦してみたいと思っていました。お話をいただいたのが29歳のときだったのですが、それまでエンタメ作品に出演させていただくことが多かったので、違うこともやってみたいなという思いが自分の中で沸々としていた。だから、このお話をいただいた時は、躊躇うことなく受け入れられたんです。チャレンジングな作品ではあるので、周りの方々が気を遣ってくださっていました。 松本 私も福士くんと同じで、このお話が来たときは、バラエティーとか、すごくポップな作品をやっていて。こういう作品をやれるところに行きたいけど、自分の現実と乖離しているし、という状況だったんですね。そんな中、(監督を務める大森)立嗣さんが「佳代をまりかでやりたい」とおっしゃってくださって。立嗣さんが覚悟を持って挑む作品の重要な役を私に任せてくださる。それだけで、台本を読む前にやりたいと思いました。 ――内容に対する抵抗はそんなになかったんですね。 福士 僕は抵抗はありませんでした。自然と導かれるように現場に立っていたように思います。 松本 私はむしろ台本を読んでから逡巡しました。正直、自分の理解が追いつかなくて、やりたいけど、やれる自信がなかったんです。でも、本能的に行きたい場所だったし、そこに立った景色が見たいという欲求が、できるかどうかわからないという不安を上回っていた。未知のものに立ち向かいたい気持ちが、私をあの場所へ連れて行ってくれました。