松山英樹の開幕戦優勝で日本はお祭り騒ぎだが… PGAツアー新シーズンの盛り上がりが米国で不安視される理由とは?
西海岸で今年も新たなライジングスターが生まれるか
とはいえ、ここ数年の西海岸シリーズを振り返ると、スター選手が次々に誕生したことは、何よりのグッドニュースだった。 昨年は、アラバマ大学在学中だった当時20歳のニック・ダンラップが、西海岸シリーズ第1戦のザ・アメリカンエキスプレスをアマチュアにして制し、ゴルフ界を大いに驚かせた。 アマチュアゆえ、151万ドルの優勝賞金を手にすることはできなかったが、ダンラップはその直後にプロ転向し、PGAツアー本格参戦を開始。7月の「バラクーダ選手権」でも勝利を挙げ、プロ初優勝と今季2勝目をあっさり達成して、大型新人ぶりを見せつけた。 プレーオフシリーズにも進出し、第2戦の「BMW選手権」までを戦って、フェデックスカップ・ランキング49位で昨シーズンを終えた。 昨年のファーマーズインシュランスオープンを制したのは、フランス出身の31歳(当時)、マチュー・パボンだった。フランス出身選手によるPGAツアー優勝は史上初の快挙だった。 デビューから3試合目での優勝はスピード出世にも見えたが、「ハイスクールからアメリカに来た僕の当時の世界アマチュアランキングは、一番良かったときでも、せいぜい800位前後。決してベリー・グッド・プレーヤーではなかった」。 ミニツアーで7年、欧州でも下部ツアーからの下積み生活を経て這い上がり、熾烈な競争を潜り抜けてきた。そんな外国人選手の悲願の初優勝に、米国のゴルフファンも温かい拍手を送っていた。 昨年の西海岸シリーズでは、そうやってスターが生まれたことが、今、懐かしく思い出される。 そして今季も、西海岸シリーズでビッグスターが生まれるのではないかと期待されているのは、昨年12月にプロ転向したばかりの17歳、ブレイズ・ブラウンという若者だ。 テネシー州出身のブラウンは、23年全米アマチュア選手権のストローク戦で史上最年少の16歳でメダリストに輝き、これまで103年間破られることがなかった球聖ボビー・ジョーンズの18歳の最年少記録を更新。 昨年は全米ジュニアでもメダリストに輝き、PGAツアーのマートルビーチクラシックにもスポンサー推薦で初出場。デビュー戦でいきなり予選通過を果たし、26位タイに食い込んだ。 AJGA(全米ジュニアゴルフ協会)ランキング1位、ジュニアゴルフスコアボード1位、大学生などを含めた世界アマチュアゴルフランキングでも79位まで上昇。 そして昨年12月に、大学進学とカレッジゴルフを飛び越えて、プロ転向に踏み切った。 PGAツアーが米国の大学生ゴルファーを対象としたツアーへのパスウェイ(道)としてPGAツアー・ユニバーシティを強化・充実させている一方で、近年は大学には進学せずにプロ転向するケースが目立ち始めている。 前述のパボンも、米国のハイスクールに留学後、カレッジゴルフではなく草の根のミニツアーや下部ツアーで腕を磨いた。 22歳の米国人選手、アクシャイ・バティアも、ハイスクール卒業後の23年にすぐさまプロ転向し、デビュー年に1勝、昨年もさらなる勝利を挙げて、すでにPGAツアー通算2勝のトッププレーヤーになっている。 ちなみに、バティアとブラウンは、同じエージェントと契約しており、これからは高校卒業後にプロ転向してPGAツアーにデビューする若者が増えていきそうな予感もしている。 そして、今、大いに期待される大型新人、ブラウンのPGAツアーのデビュー戦は、西海岸シリーズ第1戦のザ・アメリカンエキスプレスになる予定で、早くも注目が集まっている。 文・舩越園子 ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。百貨店、広告代理店に勤務後、1989年にフリーライターとして独立。1993年に渡米。在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続け、日本の数多くのメディアから記事やコラムを発信し続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。
舩越園子(ゴルフジャーナリスト)