1980年代の日本車珍装備3選! 時代が生んだ不思議な装備に迫る
2.ホンダ「アコード」(2代目)×ホンダ・エレクトロ・ジャイロケータ
世界初の自動車用慣性航法装置として1981年に2代目アコード(とビガー)用に発売されたのがホンダ・エレクトロ・ジャイロケータ。ようするにカーナビの走りである。 特徴は、GPS(人工衛星の電波を使ったグローバル・ポジションニングシステム)がない時代に開発された「地図型自動車用ナビゲーションシステム」であること。 小さなテレビのような6インチのモニター装置の背後に、透過性地図シートを差し込んで使う。それを画面に表示しながら、コンピューターからの信号により、自動車の走行軌跡、現在位置、向いている方向を重ねて表示する。 解説していくと小難しくなってしまうのだけれど、走行方向はヘリウムガス封入型のジャイロ、タイヤの回転に応じた電気信号によって走行距離を計算するセンサー、そして方向と走行距離の電気信号から刻々の現在位置を算出する航法コンピューターが、さきのモニターと併せて4つの重要パーツ。 使った印象は、相当面倒だった。なにしろ、さきに触れたように地図を差し替えていかなくてはならないからだ。使い始めたときは、便利だと思ったものだけれど、自車の位置はずれるし、山道を走ってみたときは大変だった。 ホンダ・エレクトロ・ジャイロケータを今、使う気にはなれないけれど、これがあったから今がある、という視点に立てば、けっしてトンデモ技術ではないのである。それにしても、当時、まさかiPhoneのようなデバイスが登場してミラーリングのような技術が使えるようになるとは思わなかった。
3.いすゞ「ピアッツァ」(3代目)×サテライトスイッチ
サテライトスイッチとは、ステアリングホイール左右に、操作類を集約する機構のこと。ジョルジェット・ジウジアーロひきいるイタルデザインが手がけ、1977年に発表したプロジェクト「アッソ・ディ・フィオーリ」で提案。 ウインカーもワイパーも、レバーの代わりにサテライトと呼ばれるかたまりの中に埋め込まれている。シトロエンも一時期、このアイディアに凝っていて、「CX」(1977年)や「ビザ」(78年)といったモデルでもサテライトスイッチを採用していた。 CXでは、ホーンボタンは左のサテライトのサイドのボタンを叩く、パッシングライトを使うときは右のサテライトのサイドを叩くという具合で、とっさの判断に迷うこともなかった。 このアイデアを広くとらえれば、ウインカーとワイパーレバーの機能を統合したメルセデス・ベンツや、ステアリングパッドにウインカースイッチを埋め込んだフェラーリやランボルギーニも思い浮かぶ。 いすゞは、アッソ・ディ・フィオーリをベースにピアッツァを開発した際、サテライトを実現した。これだけで英断だったけれど、オリジナルのピュアなデザインがちょっと損なわれた、と、当時ちょっと批判されてしまった。 日本で売る場合、規格との戦いもあったろう。従来のレバースイッチの機能を盛り込んだり、合成樹脂の質感がちぐはぐだったり、そもそもサテライトの形が不恰好だったり……。 いすゞのインテリアデザイナーの苦労がしのばれる。
文・小川フミオ 編集・稲垣邦康(GQ)