「今週は1000万円以上使っている」職業“お金持ち”さんに聞く、富裕層への課税強化なら日本を去る? 経団連の提言に楽天G・三木谷会長は「終わってる」
■パックン「アメリカ国籍だと海外にいても課税されるけど、優秀な人は集まっている」
金融所得課税に詳しい東京財団政策研究所 主任研究員の岡直樹氏は、「十倉会長は格差拡大に危機感を相当持っているのでは。日本では社会保険料が右肩上がりで、所得税や消費税より額が大きい。その負担を考えた時に、富裕層が目に入ってきたのだろう」と提言にコメント。 一方、パックンは、「働いて稼ぐ人と、ぼーっとして稼ぐ人が同じ税率でいいのか」と問いかける。「所得税を45%納めているのに、売却益は20%。“すごいお金持ち”は収入のほとんどがキャピタルゲインで、すでに持っている資産が増えていく。朝から晩まで働いている人は、『20%でも嫌がるのか』と違和感を覚えている」。 これに岡氏は「アメリカでは、イーロン・マスク氏などのお金持ちは資産を売らないため、課税する機会がない。資産を持っているだけで、融資も受けられる。バイデン政権では、資産を時価評価して課税する議論もあったが、今後は実現しないだろう」と指摘。また、国籍を持っていると海外にいても所得税を申告する義務があるという、アメリカの税制度にも触れた。 これにパックンは、「どこにいても課税されるけど、優秀な人はアメリカに集まっている」と指摘し、「社会保障費と税を合わせた国民負担率を見ると、日本はOECD(経済協力開発機構)36カ国中22位と高くない。負担率が高いフランスにもお金持ちはいて、生まれ育った国を税率だけで捨てる人はそんなにいない」との考えを述べた。
■「日本の金融所得課税は先進国の中ではタックスヘイブン的」
今年7月のG20財務相・中銀総裁会議では、超富裕層への効果的な課税のため協力することを合意した。岡氏は「日本は資源もあまりなく、人材に頼っている国だ」とし、「外国で才能を発揮してもらい、“ふるさと納税”のように日本へ投資してもらえば良い。G20といった国際的枠組みで、税率が低い国をやめさせれば、税金を理由とした移住はなくなるとの議論もある」と提案する。 パックンも「法人税と所得税の最低税率を一律に義務づける条約を作り、入っていない国に対して罰則を設けてもいい」との認識を示し、「日本で『社会保障改革が必要だ』と言うが、具体的にどうするのか。年金に頼る高齢者を切り捨てるとしたら、現役世代も良いとは言わないだろう。一番大勢がうなずけるのが、お金持ちからの徴収だ」とした。 今回の経団連によるビジョンでは、「2034年度には5兆円程度の財源」と試算されているが、岡氏は「所得税の最高税率を上げても、さほど入らない」と見ている。「金融所得課税で、日本は20%。イギリスが税率を上げ、ドイツやアメリカも州税と合わせると20%以上だ。先進国の中では、日本はタックスヘイブン的な国と言える」と指摘。 富裕層への金融所得課税をめぐっては、石破総理が就任前の9月時点では「実行したい」とするも、就任後の12月には「貯蓄から投資の流れを止めてはいけない」と発言がやや軟化。一方、経済同友会の新浪代表幹事は「25%くらいはあっていい」とコメントしている。 これに泉氏は「嫌ではあるが、周囲の投資家も25~30%程度までなら飲めると思う。事業所得よりだいぶ抑えられていることには間違いない」と、許容範囲を示した。