「無意味」だった台湾の防衛戦略大転換か 決め手は米軍ドローン「地獄絵図」作戦 中国が侵攻を躊躇「ヤマアラシ化」が抑止力に
台湾は「飲み込んだら痛い目に遭うヤマアラシのようになるべきだ」というのが、米国の長年の主張である。
その米国が見切り発車したように、無人の小型武器重視に踏み切ったなら、台湾も戦略を見直さざるを得なくなる。戦うのは、あくまで台湾自身であるからだ。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は当初、数日程度の短期決戦でウクライナの首都、キーウを攻め落とし、一挙に全土を支配する構想だった。習氏もこれにならって、台湾侵攻を決断するなら、「1週間程度の短期決戦を目指す」とみられている。いわゆる「ショート・シャープ戦争」である。
これに対して、米国はドローン作戦で「時間稼ぎ」を狙う。パパロ司令官は「詳細は話せないが、米軍は極秘技術を使って、台湾海峡を地獄絵図のようにする。それで1カ月持ちこたえれば、米国や台湾、同盟国の援軍が来る」と語っている。
習近平総書記(国家主席)は、台湾がヤマアラシになって「簡単に落とせない」と見れば、侵攻を躊躇するかもしれない。それこそが、抑止力の核心だ。
ただ、ドローンなどの売却が承認されても、実戦配備されるまでには時間がかかる。習氏の任期は2027年まで。それまでに侵攻作戦を始められたら、配備が間に合わないかもしれない。
先のCNNによれば、ジョー・バイデン政権は15回も武器売却を承認したが、実際には「6月3日時点で196億ドル(約3兆1300億円)分が納入されていない」という。「台湾のヤマアラシ化」が「絵に描いた餅」になるかどうかは、米国と台湾次第だ。
■長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ)ジャーナリスト。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。政府の規制改革会議委員などの公職も務めた。著書『日本国の正体 政治家・官僚・メディア―本当の権力者は誰か』(講談社)で山本七平賞受賞。ユーチューブで「長谷川幸洋と高橋洋一のNEWSチャンネル」配信中。